黒百合の女帝

 「そういえば、姉がじきに帰国してくるの。」

 「ふぅん、姉妹仲はいいのか?」

 「当然。うちは家庭環境が悪かったから。姉が唯一の家族だった。」

 「俺と似てるな。俺も弟しか居なかった」

グラスを傾けながら、そう語る聖矢。

哀愁漂うその姿に、手応えを感じる。

 「弟さんも暴走族に入ってるの?うちは両方グレたけど。」

 「いや、グレたのは俺だけだ。あいつはべそかいたままだよ」

 「あなたが心強いんでしょ。縋れるから、弱くても生きれる。」

 「さあな。ただ、俺はあいつのためならなんでもする」


 そう言うと彼は酒を飲み干し、もう一杯頼んだ。

間もなくして、ウイスキーが手元に置かれる。

私の方も、既にグラスの中は空。

しかし、追加での注文はしなかった。

わざと腕時計を確認し、顔を上げる。

 「そろそろ行かなきゃ。連絡先、交換しても良い?」

 「勿論。あ、ここは俺が払うよ」

 「ありがとう。それじゃあね。」

連絡先を交換し、席から立ち上がる。

扉に手を掛ける直前に、一度振り向いた時。

名残惜しそうにこちらを見つめる、総長様が居た。