悪魔は黙って考えこんでしまった。
(あっ、今の顔、読書してるときの燈吏くんそっくり)
今この一瞬だけ、燈吏くんと図書室にいたときに戻ったみたい。
(ずっと黙っててほしいかも)
しかし、すぐに悪魔の顔に戻ってしまった。
「こういうのは、あれだよ。燈吏には燈吏の人生があってだなあ。言いたいこと、分かるだろ?」
「まあ……それは、うん」
「それを無理矢理変えるには、お前の残りの寿命を全部もらっても足りねえな。そう、そういうことだから!」
なぜかエバっている。
でも、考えてみれば悪魔の言う通りだ。
転校の理由を、燈吏くんは『父さんの仕事の都合』だと言っていた。
それなのに、元の学校に戻らせようとしたら、たくさんの人を巻き込むことになるに違いない。
「じゃあ、偶然町中で会うとかは?」
「すげえ遠くに引っ越したから、そんな偶然ありえねえな」
「燈吏くんのこと詳しいんだね……」
「お、俺は悪魔なんだから、当然だろっ」



