燈吏くん──
それまで、私にとっての学校は、内申書の欠席数を増やさないためだけに行く場所だった。
自分の席を空席にしなければいい。
休み時間は、読書をしてやり過ごす。
読む本の中身は何でもいい。
夢中になって読んでしまうこともあるものの、実際のところは面白くても面白くなくても、どっちだって構わない。
ひとりが好きなように見せるための小道具に過ぎないから。
そんな私に、躊躇うことなく声をかけてきたのが燈吏くんだった。
──それ、どう? 面白い? 僕もちょうど読んでみたい思ってたんだけど。
ニコニコするでもないし、意を決して訊いてきたふうでもしなかった。
ごく普通の会話という感じだった。
──まあまあかな。
──図書室の本だよね。返すときに僕も一緒に行っていい? 次借りたい。
──あー、うん。
──じゃあ、待ってるから、そのときになったら声をかけてよ。



