悪魔を召喚したならば


 それなのに、燈吏くんが話しかけてくれたあの日以降、私はひとりでなくなった。
 すると、燈吏くんが転校して再びひとりに戻ったとき、どうにも堪らなくなった。
 燈吏くんのせいで、本当はひとりは淋しくて嫌だったと気づいてしまったのだ。

 誰かに燈吏くんのことを話したかった。
 だけど、それはあまりに自分勝手だと思った。
 燈吏くんがいない淋しさを紛らわせるために利用するみたいで。

 変に頑なになってしまっていたのかもしれない。
 それとやっぱり、『今までひとりでいたがってたくせに、何でいきなり近づいてくるの?』と思われないか、怖かったというのもある。

「まあ、もしもそれで嫌な思いをすることがあったら、『それでもよくがんばった』って燈吏が慰めてやるよ」

 クラスメイトに声をかけることに対して、もう躊躇いを感じないし、怖くもない。
 自然と口角が上がる。

 燈吏くんは幻なんかじゃなかった。
 今目の前にいる悪魔は、紛れもなく燈吏くんだ。