悪魔を召喚したならば


◻︎

「なあ、いい加減、諦めてくんない?」

 悪魔は天井すれすれの高さをぷかぷか浮いていて、私のことを見下ろしている。

「もう3日だよ? 俺を帰らせてくれよ」

 私のほうは3日経ち、意外と悪魔といる生活が気に入り始めていた。
 いつでも燈吏くんそっくりな顔が拝めるから。
 そしてそれ以上に、何か喋りたいときに、気軽に話しかけられる相手がいるというのはいい。

「だって、燈吏くん以外のお願いが思い浮かばないんだもん」
「だから、それ以外でって何度も言ってんだろ」
「どうしてもダメなの?」
「あいつは幻みたいなもんだったと思え」
「そんなはずない。最後の日に、『また会える?』って訊いたら、『うん』って言ってくれたんだから!」
「『うん』なんて言ってねえ! 『うーん』って言ったんだよ。肯定じゃなくて、曖昧な否定だっつーの。自分に都合よく解釈すんな」
「…………」

 悪魔から丁寧に教えられるまでもなく、本当は分かっていた。