病院の近くのカフェに
向かい合って座った。
外の車には春樹くんが待っている。
「椿さんはお元気ですか?」
当たり障りのない話で沈黙を回避した。
「あぁ。」
胸ポケットから携帯を出すと
小さな天使を抱いた
笑顔の椿さんの写真を見せてくれた。
「わぁ可愛い。おめでとうございます」
やんちゃそうな顔は父親似なのだろう。
「キミに会いたがってるんだが、俺が止めたんだ。」
携帯をしまうと硬い表情をした。
「銀がいない今、俺達と関わる必要ないからな」
あぁ、この人はやっぱり
銀丈くんがいる世界の人なんだな。
「銀丈くんは、どうしていますか?」
1番聞きたいこと。
でも聞いたからってどうにもならないことを
口にしてしまった。
こうして向かい合って座っている以上
お互い話したいことは
これしかないってのはわかってる。
「銀が懲役に行くのはだいぶ前から決まっていたんだ。」
そう言って
煙草に火をつけて一息吐いた。
長いため息のように。
会社を⋯って言ったけど
きっとテレビのテロップで見た殷雷組のこと。
大きく進出するためには敵も多くて
銀丈くん達は危ない橋をいくつも渡ったのだと。
ようやく終わりが見えた頃
ジンくんを失い、
銀丈くんも大怪我をして
転がるように戦況が悪化していって
最後の一手として
敵方に悪事を全部被せるために
銀丈くんの逮捕という幕引きが必要だったのだと。
淡々と話してくれた。
私はただ黙って聞いていた。
そういう世界だと言われても
はいそーですかなんて言えなかったから。
「逮捕状も出てたし、
すぐ出頭する予定だったんだが
君に会った翌日まで延ばすよう掛け合ってくれと
銀に頼まれたんだ」
卒業式の日だ。
「キミに何も残せないから、
最後にキミの願いを叶えたいって。」
話を聞きながら
胸が張り裂けそうだった。
やっぱり⋯。
銀丈くんの笑顔や甘い声が
次々溢れてくる。
月が綺麗だと
泣き顔に見えたあの笑顔を
思い出したとき
私は、ただただ泣くしかなかった。
「こんな話、今更だが、
銀がキミを大事に思ってたことだは確かだよ。」
「言ってくれたら良かったのに。
ただ、じゃあなって⋯」
「待ってろとも、忘れろとも言えなかったんだろ。
どちらを言ってもお互い辛くなるってわかってるから。」
銀丈くんは
幸せな時間で最後を飾り
愛を置き土産に行ってしまった。
そうするしかできなかったから。
「銀を助けてくれて感謝してる。
巻き込んですまなかった。銀を許してやってほしい。
キミには幸せになってほしいと椿からの伝言だ。
俺もそう思ってる。」
そう言って伝票を持つと席を立った。
向かい合って座った。
外の車には春樹くんが待っている。
「椿さんはお元気ですか?」
当たり障りのない話で沈黙を回避した。
「あぁ。」
胸ポケットから携帯を出すと
小さな天使を抱いた
笑顔の椿さんの写真を見せてくれた。
「わぁ可愛い。おめでとうございます」
やんちゃそうな顔は父親似なのだろう。
「キミに会いたがってるんだが、俺が止めたんだ。」
携帯をしまうと硬い表情をした。
「銀がいない今、俺達と関わる必要ないからな」
あぁ、この人はやっぱり
銀丈くんがいる世界の人なんだな。
「銀丈くんは、どうしていますか?」
1番聞きたいこと。
でも聞いたからってどうにもならないことを
口にしてしまった。
こうして向かい合って座っている以上
お互い話したいことは
これしかないってのはわかってる。
「銀が懲役に行くのはだいぶ前から決まっていたんだ。」
そう言って
煙草に火をつけて一息吐いた。
長いため息のように。
会社を⋯って言ったけど
きっとテレビのテロップで見た殷雷組のこと。
大きく進出するためには敵も多くて
銀丈くん達は危ない橋をいくつも渡ったのだと。
ようやく終わりが見えた頃
ジンくんを失い、
銀丈くんも大怪我をして
転がるように戦況が悪化していって
最後の一手として
敵方に悪事を全部被せるために
銀丈くんの逮捕という幕引きが必要だったのだと。
淡々と話してくれた。
私はただ黙って聞いていた。
そういう世界だと言われても
はいそーですかなんて言えなかったから。
「逮捕状も出てたし、
すぐ出頭する予定だったんだが
君に会った翌日まで延ばすよう掛け合ってくれと
銀に頼まれたんだ」
卒業式の日だ。
「キミに何も残せないから、
最後にキミの願いを叶えたいって。」
話を聞きながら
胸が張り裂けそうだった。
やっぱり⋯。
銀丈くんの笑顔や甘い声が
次々溢れてくる。
月が綺麗だと
泣き顔に見えたあの笑顔を
思い出したとき
私は、ただただ泣くしかなかった。
「こんな話、今更だが、
銀がキミを大事に思ってたことだは確かだよ。」
「言ってくれたら良かったのに。
ただ、じゃあなって⋯」
「待ってろとも、忘れろとも言えなかったんだろ。
どちらを言ってもお互い辛くなるってわかってるから。」
銀丈くんは
幸せな時間で最後を飾り
愛を置き土産に行ってしまった。
そうするしかできなかったから。
「銀を助けてくれて感謝してる。
巻き込んですまなかった。銀を許してやってほしい。
キミには幸せになってほしいと椿からの伝言だ。
俺もそう思ってる。」
そう言って伝票を持つと席を立った。
