恋の囚人番号251107都合いい女

春休みはこれでもかってくらい
泣き暮らした。

泣いては途方に暮れて
途方に暮れては、また泣いた。


そして、ある日

夕方のニュースで
銀丈くんの名前を聞いた。

殷雷組 幹部 雷鎚銀丈容疑者(24)

テロップで名前を目にした。

たくさんの容疑をかけられ
出頭したって⋯。


銀丈くんだけが
そんな目に合うなんて
私には到底理解できないけど
きっと、これが銀丈くんの生きている世界。

きっと、銀丈くんは
色んな物を抱えて
傷を負う決断をしたんでしょ?

卒業式の日
銀丈くんは、もう決めてたんだよね。


驚きはしなかった。

じゃあな。と
最後に言った銀丈くんは
本当に行ってしまったんだもん。

私に極上の夢を見せたままで。


夢から覚めた私は独りぼっちに
なったって言うのにさ。


私の中は
銀丈くんでいっぱいなのに
肝心の銀丈くんだけがいない。


卒業したら一緒に暮らそって言ったのにね。
一生背負ってくれるって言ったのにね。

いなくなるなら
優しくしなくてよかったのに⋯


当たり前に来ると思ってた明日は
もう来ない。

銀丈くんはもういない。

いない⋯。


こんなに好きにさせといて
置いていくなんて
ひどいね。


もう、いないのに
回りくどい愛だけ残して
行っちゃってさ。

言い返す言葉も届かないところへ
行っちゃって
ずるいね。

そばにいてって言ったのに。
それだけで良かったのに。

行き場のない思いを抱えて
私はまた泣いた。



だけど
本当は
わかってる。


銀丈くんは
自信満々で意地悪で
だけど優しくて

強くて甘くて
嘘のない人

私に注いでくれたものは
暖かくて甘くて優しい極上の想い

だから

言えなかったんだよね。

最後の夜だなんて。


でも決めたことは
覆らないから

いつものように
過ごしたんだ。


最後が私の泣き顔にならないよう
精一杯なにもないフリをして
愛してくれたんだよね。