恋の囚人番号251107都合いい女

学校が自由登校になり
いよいよ卒業式を待つだけになった。

銀丈くんの思い詰めた深夜の電話から
一度も連絡がないまま
のろのろと時間が過ぎていく。

寝ても覚めても
想うのは
銀丈くんの事ばっかで
長い 長い待ちぼうけの中
不安に負けないように
立ってるのが精一杯だった。

休みを謳歌するわけもなく
私は、1日のほとんどを自分の部屋で過ごしていた。
そんな日を,何度も何度も繰り返すだけの日々。



ピンコン♪

銀丈くんのいない日常を繰り返していた
ある昼下がりのLINE

反射的に飛びついて期待する。
意外な人だった。

「え?」


美味しいチャイの香りが鼻孔をくすぐったか思うのと同時に
美しい日本人形の顔が浮かんだ。
初めて開くLINE。

椿さん⋯?

(お店に来ない?)


ネイルサロンを4店舗もやっているのだと
あの日、聞いてはいたけど
急に施術してくれるなんて

なんだろう?卒業式用?

貼り付けられたURLを頼りに
指定された時間に向かった。



女の子の夢と憧れが詰まったような
テンション爆上がりのお店に入ると

夜会巻きが良く似合う女の人が
ニコニコと対応してくれた。
「宮崎です」
名前を告げると
「あっ⋯!こちらです」
と、1番奥の部屋に案内してくれた。


どのブースも仕切りを隔てて
ネイリストとお客さんで埋まっている。

私だけ個室?

ドアを開けると

椿さんがさらに大きくなったお腹で
立っていた。


あれ?

ネイルサロンなのに
この部屋には何もない。


事務所?

はち切れそうなお腹は
幸せの象徴そのものなのに
椿さんの顔は憂いを帯びていた。


「せりちゃん。久しぶりね。」
凛とした声は変わらないけれど
違和感を感じて
不安が増幅していく。


「わざわざ来てもらってごめんね。」
コートも脱がずに佇む椿さんを見て
ネイルする気なんて端からないってことがわかった。


「誰にも知られず行かなきゃならないから」
大きなお腹で車のキーを握りしめていた。


みぞおちが痛む。
急に喉が渇いて
ゴクンと鳴った。


「銀が刺されたの。重体よ」