新しい年を迎えて、
雪がちらつく日も増えたっていうのに
相変わらず忙しい日々が続いた。
今日だって、
夕方の会合までの僅かな時間に
ようやく今日初めての食事をとる。
「あれ?銀ピアスしてんの?かっけぇ」
「だろ。お守りなんだとさ」
「泣かせるねぇ〜」
「ジンくん。そーいやコレ返す。」
輪っかが沢山ついたリングゲージ。
ジンくんがなんで、こんなの持ってるのか
知らないけど役にたった。
「ハハッ。忘れてたわ。ばっちり測れたん?」
「まぁな。」
アイツにはめた指輪を買うために
ジンくんに借りたコレで
寝てるアイツの指を
こっそり測った。
アイツの指が細くて
測った輪っかが小さすぎて
思わず
「ちっさ」
って声に出しちゃって
慌てて口に手を当て
寝てるアイツの顔を覗き込んだ。
我ながら、何やってんだって思ったけど
あんなことアイツの為じゃなきゃやんねーな。
寝起きの驚いた顔や
大喜びして抱きつくアイツを思い出した。
「あ、なんか思い出してんだろ。ニヤけてんぞ」
「んなわけねーだろ。」
ジンくんは茶々入れたくて仕方ないようだった。
「うまくいってんだな。」
「うまく…か、どうかはわかんねーけど」
食後のコーヒーを待って
煙草に火をつけた。
「相変わらずホテルで会ってんの?」
「あぁ」
「まぁ、そうだろな。お前んち…。
ビューに目がくらんで、セキュリティがザルだもんな」
「女が居つくなんて想定外だったんだよ。」
「銀が一人の女に決めるとはなぁ~。」
ジンくんが、わざとらしく感慨深そうな顔をする。
落ち着くまでは…家にアイツを近づけたくなかった。
花菱組が乗り込んできてから
剣竜組も殺気立って
あちこちで煙が上がってる。
こっちの絵図通りだけど
ケツに火が付いた奴らは手段を選らばねーのは
百も承知だから。
アイツと離れられない以上
少しでも安全なところに隠しておくしかない。
だからって、不安を取り除いてやることはできねーから
ガラスの箱にしまって
贖罪のように甘やかすしかなかった。
「ジンくんは?」
「俺ぇ?俺は根っからの歌舞伎もんだからな。
女も金もいっぱいあるほうがいい」
豪快に笑った。
ジンくんは、
中性的な顔立ちからは
想像もつかないほど喧嘩っ早くて
俺が帰国した時には
すでに立派な墨を背負って親父のところにいた。
年が近いせいか、俺付きになってはいるけど
馬が合いすぎて
仕事以外でも相棒のようにつるんでいた。
悪行の限りを淡々とこなしながら
敵を瞬殺しては喜々とするジンくんに
何度も助けられてきた。
「とりま、
ジンくんの願いも叶うように鬼退治しようぜ」
「ハハッ。そうだな。
銀は安心して俺に背中預けて走れよ。」
「おぉ。頼もしいな。」
落ち着くまで…あと少し。
「よし。行くか」
年季の入った喫茶店を出て細い路地を歩くと
また雪が降り始めていた。
「さみぃな。終わったら飲み行こうぜ」
「せりに会いたい」
「ごねんなよ」
ジンくんが背中を丸め笑って小突いてきた。
T字路の突き当りにある
兄貴の事務所が入ったビルに向かう。
通りを渡ろうとしたとき
背後から爆音のディーゼルエンジンが
近づいてくる音がした。
振り返って
路地に似合わぬサイズの
大型ダンプを見るのと
力いっぱい突き飛ばされるのは
同時だった。
ジンくんに
突き飛ばされて道路に転がる俺の目に映った風景は
ひしゃげたジンくんが
ダンプカーのフロントに張り付いたまま
兄貴のビルに突っ込んでいくところだった。
雪がちらつく日も増えたっていうのに
相変わらず忙しい日々が続いた。
今日だって、
夕方の会合までの僅かな時間に
ようやく今日初めての食事をとる。
「あれ?銀ピアスしてんの?かっけぇ」
「だろ。お守りなんだとさ」
「泣かせるねぇ〜」
「ジンくん。そーいやコレ返す。」
輪っかが沢山ついたリングゲージ。
ジンくんがなんで、こんなの持ってるのか
知らないけど役にたった。
「ハハッ。忘れてたわ。ばっちり測れたん?」
「まぁな。」
アイツにはめた指輪を買うために
ジンくんに借りたコレで
寝てるアイツの指を
こっそり測った。
アイツの指が細くて
測った輪っかが小さすぎて
思わず
「ちっさ」
って声に出しちゃって
慌てて口に手を当て
寝てるアイツの顔を覗き込んだ。
我ながら、何やってんだって思ったけど
あんなことアイツの為じゃなきゃやんねーな。
寝起きの驚いた顔や
大喜びして抱きつくアイツを思い出した。
「あ、なんか思い出してんだろ。ニヤけてんぞ」
「んなわけねーだろ。」
ジンくんは茶々入れたくて仕方ないようだった。
「うまくいってんだな。」
「うまく…か、どうかはわかんねーけど」
食後のコーヒーを待って
煙草に火をつけた。
「相変わらずホテルで会ってんの?」
「あぁ」
「まぁ、そうだろな。お前んち…。
ビューに目がくらんで、セキュリティがザルだもんな」
「女が居つくなんて想定外だったんだよ。」
「銀が一人の女に決めるとはなぁ~。」
ジンくんが、わざとらしく感慨深そうな顔をする。
落ち着くまでは…家にアイツを近づけたくなかった。
花菱組が乗り込んできてから
剣竜組も殺気立って
あちこちで煙が上がってる。
こっちの絵図通りだけど
ケツに火が付いた奴らは手段を選らばねーのは
百も承知だから。
アイツと離れられない以上
少しでも安全なところに隠しておくしかない。
だからって、不安を取り除いてやることはできねーから
ガラスの箱にしまって
贖罪のように甘やかすしかなかった。
「ジンくんは?」
「俺ぇ?俺は根っからの歌舞伎もんだからな。
女も金もいっぱいあるほうがいい」
豪快に笑った。
ジンくんは、
中性的な顔立ちからは
想像もつかないほど喧嘩っ早くて
俺が帰国した時には
すでに立派な墨を背負って親父のところにいた。
年が近いせいか、俺付きになってはいるけど
馬が合いすぎて
仕事以外でも相棒のようにつるんでいた。
悪行の限りを淡々とこなしながら
敵を瞬殺しては喜々とするジンくんに
何度も助けられてきた。
「とりま、
ジンくんの願いも叶うように鬼退治しようぜ」
「ハハッ。そうだな。
銀は安心して俺に背中預けて走れよ。」
「おぉ。頼もしいな。」
落ち着くまで…あと少し。
「よし。行くか」
年季の入った喫茶店を出て細い路地を歩くと
また雪が降り始めていた。
「さみぃな。終わったら飲み行こうぜ」
「せりに会いたい」
「ごねんなよ」
ジンくんが背中を丸め笑って小突いてきた。
T字路の突き当りにある
兄貴の事務所が入ったビルに向かう。
通りを渡ろうとしたとき
背後から爆音のディーゼルエンジンが
近づいてくる音がした。
振り返って
路地に似合わぬサイズの
大型ダンプを見るのと
力いっぱい突き飛ばされるのは
同時だった。
ジンくんに
突き飛ばされて道路に転がる俺の目に映った風景は
ひしゃげたジンくんが
ダンプカーのフロントに張り付いたまま
兄貴のビルに突っ込んでいくところだった。
