「えぇ!?明日からシンガポール!?」
リビングにせりの声が響く。
11月も半ば
ずいぶん寒くなったっていうのに
相変わらず短パンから生っ白い脚を出して
プリンを食べている。
週末はいつも泊まっていたのに
最近仕事が立て込んで
会う時間も減っていた。
今日だって
夕方やっと会って
食事もそこそこに
慌ただしく抱いて
夜中の仕事に合わせて送っていく。
そんな隙間時間。
「出張どのくらい?お土産はゲロ吐くライオンかな」
「それマーライオンな。ゲロじゃねーし。」
忙しい中でも
嫌な顔1つせず、隣で笑う
呑気なせりがホッとさせてくれる。
早く卒業しねーかな、こいつ。
ずっと閉じ込めておきてーな。
⋯。
一瞬躊躇して一気に言った。
「椿が一緒なんだ」
せりの顔が強張った。
思った通りの反応。
そりゃそうだよな。
あれから、ずっと
せりが聞いてこないのをいいことに
俺も何も言わなかったから。
こんだけ一緒にいれば
言わなくてもわかんだろって
うやむやにしてたんだ。
でも黙って行くのも気が引けるし
もう言っても平気だって勝手に思ってた。
「そっかぁ〜。旅行?
良かったじゃん。お兄さんは平気?
まぁいっか。こんなチャンスないもんね!
うん。良かったじゃん。」
急に早口で
ヘッタクソに笑ってる。
「あ!私、本屋寄って帰るんだった!行かなきゃ。」
AVの大根女優だって
もうちょっとマシな演技だろってくらい
ド下手なセリフと振りで
素早くリビングを出てった。
あんなにはしゃいで食ってたプリン放って
本屋とか
っんなわけねーだろ。
「せり」
寝室に行くと
薄暗い部屋の中
ゆるいデニムに下着姿で背を向け立っていた。
「着替え中」
こっちも見ずに力なく答えた。
「聞けよ。急に明日ってなって⋯
この話なくなったと思ってて⋯」
言えば言うほど墓穴だ。
言い訳っぽくてクソダセェ。
全部言うか?
いや、心配かけたくねぇし⋯。
「こっち向けって」
細い手首を掴んでこっちを向いたせりは
瞳いっぱいに溜めた涙をこぼさないように
必死で奥歯を噛み締めていた。
あぁ⋯
またこの顔。
俺はこいつを泣かせるしかできないのかな。
情けねぇ。
力いっぱい手を振り払って
「私は平気。」
また背を向けた。
平気じゃねーだろ。
trrrrrrr....trrrrrrr.....
後ろポケットの携帯が鳴る。
っんだよ。くそ。
「なんだよ。あ?いるよ。だからなんだよ。…え?」
言い終わらないうちに玄関のチャイムが鳴った。
玄関を開けると
椿がいた。
リビングにせりの声が響く。
11月も半ば
ずいぶん寒くなったっていうのに
相変わらず短パンから生っ白い脚を出して
プリンを食べている。
週末はいつも泊まっていたのに
最近仕事が立て込んで
会う時間も減っていた。
今日だって
夕方やっと会って
食事もそこそこに
慌ただしく抱いて
夜中の仕事に合わせて送っていく。
そんな隙間時間。
「出張どのくらい?お土産はゲロ吐くライオンかな」
「それマーライオンな。ゲロじゃねーし。」
忙しい中でも
嫌な顔1つせず、隣で笑う
呑気なせりがホッとさせてくれる。
早く卒業しねーかな、こいつ。
ずっと閉じ込めておきてーな。
⋯。
一瞬躊躇して一気に言った。
「椿が一緒なんだ」
せりの顔が強張った。
思った通りの反応。
そりゃそうだよな。
あれから、ずっと
せりが聞いてこないのをいいことに
俺も何も言わなかったから。
こんだけ一緒にいれば
言わなくてもわかんだろって
うやむやにしてたんだ。
でも黙って行くのも気が引けるし
もう言っても平気だって勝手に思ってた。
「そっかぁ〜。旅行?
良かったじゃん。お兄さんは平気?
まぁいっか。こんなチャンスないもんね!
うん。良かったじゃん。」
急に早口で
ヘッタクソに笑ってる。
「あ!私、本屋寄って帰るんだった!行かなきゃ。」
AVの大根女優だって
もうちょっとマシな演技だろってくらい
ド下手なセリフと振りで
素早くリビングを出てった。
あんなにはしゃいで食ってたプリン放って
本屋とか
っんなわけねーだろ。
「せり」
寝室に行くと
薄暗い部屋の中
ゆるいデニムに下着姿で背を向け立っていた。
「着替え中」
こっちも見ずに力なく答えた。
「聞けよ。急に明日ってなって⋯
この話なくなったと思ってて⋯」
言えば言うほど墓穴だ。
言い訳っぽくてクソダセェ。
全部言うか?
いや、心配かけたくねぇし⋯。
「こっち向けって」
細い手首を掴んでこっちを向いたせりは
瞳いっぱいに溜めた涙をこぼさないように
必死で奥歯を噛み締めていた。
あぁ⋯
またこの顔。
俺はこいつを泣かせるしかできないのかな。
情けねぇ。
力いっぱい手を振り払って
「私は平気。」
また背を向けた。
平気じゃねーだろ。
trrrrrrr....trrrrrrr.....
後ろポケットの携帯が鳴る。
っんだよ。くそ。
「なんだよ。あ?いるよ。だからなんだよ。…え?」
言い終わらないうちに玄関のチャイムが鳴った。
玄関を開けると
椿がいた。
