恋の囚人番号251107都合いい女

バーカウンターでdiet Cokeを注文する。
マリとコウヘイはフロアで大騒ぎしていて
私はさすがに暑くて
(言われた通りジャケット着たままだから)休憩。

バーテンの人も今では顔なじみになり
銀丈くんにお酒をぶっかけた夜
タオルを持ってオロオロしてたバーテンの人は
「あの時はマジこの子死んだと思ったわ」と
未だに笑う。

銀丈くんの許可なしには
アルコールを出してもらえない。


「飲むなら俺と。酔うなら俺に。」

サラッと言う銀丈くんがカッコ良すぎて
しっかり言いつけを守ってる。


心配症とか、過保護とか思う時もあるけど

私を籠に入れておきたいなら
喜んで入りたい。

だって
ずっと見ててくれるなら
ずっと籠の鳥でいい。

「ノンアルのカクテル作ってあげよか?」
「わ~い」

事情を知ってるバーテンの人が
好きなグラスを選ばせてくれる。

キラキラ眩いグラス棚を指差そうと
背の高いカウンターに
背伸びして寄りかかると
足元が心許なく揺れる。


丁度ジャケットがズリ上がって
太腿があらわになったとき

後ろから、

大きな手にお尻ごと鷲掴みされて
尻尾が揺れた。

「ひゃぁんっ」

「行儀の悪い猫だな」
一瞬で私をご機嫌にする声が
真横から聞こえた。

黒いワイシャツのボタンを開けたままの銀丈くんが
ムスッとカウンターに頬杖をついて覗き込んでいる。


23:55

急いで帰ってきてくれたのかな?
嬉しくて思わず

「おかえりーっっ」
どーんって勢いよく、飛びついた。
銀丈くんはビクともせず片手で抱きとめた。

着せられたジャケットのおかげで
ずっと銀丈くんの香りに包まれていたけど
やっぱり腕の中には敵わない。
体温と鼓動を感じると
それだけで満たされた。


バーテンの人が、大きな球体の氷を入れたグラスに
アルコールを注いで銀丈くんに差し出す。
「お前は?」
「ハロウィンカクテル。あ、ノンアルだよ。」
誤解のないよう即座に訂正。

「いいよ。入れてやって。」
物欲しそうな私の視線に折れて笑うと
バーテンに許可を出した。

銀丈くんって、結局私に甘い。


発光しそうな薄い黄色のカクテル
グラスの縁には滴る血のようなシロップがかかってる。
ライムとミントを添え完成。

「ゴーストレモネードです。happy halloween」
うわぁぁぁ~
きれい〜。

「お気に召したか?」
「銀丈くん大好き」



ハロウィンの夜
お化けと魔女が踊り明かす隅っこで
黒猫と騎士は、
鈴の音みたいな乾杯をした。


「Halloweenの続きしようぜ」

グラスを飲み干すと
綺麗に口角を上げて、私を急かした。

慌てて飲んだら急に身体が熱くなった。
ドキドキする。
アルコールのせいだけじゃないな。

銀丈くんといるとずっとそう。
初めて会ったあの夜から
私は、ずっと銀丈くんに恋をしている。


ズット ズット 続イタラ 良カッタノニ⋯