お母さんに言ってみたことがあった。本気で悩んで

るって。

　今まではヘラヘラしながら言ってたから、本気な私

にびっくりしてた。

　でもすぐにいつもの顔に戻って、

　「背高いのかっこいいじゃん。お母さんもそれぐら

い欲しかったな。背高くてかっこいい人いっぱいい

るよ？」

　って言った。

　あぁ、そんなもんか。って思った。

　怒ってるわけでもなく、悲しいわけでもなかった。

いや、少し悲しさもあったのかもしれない。

　唖然としたんだ。

　私はお母さんが大好きで、しっかり者でテキパキ動

くお母さんをすごく信頼してた。

　だから、何か価値観が変わるような、私を負の連鎖

から救い出してくれるような、そんな期待をしていた

んだ。

　でも、帰ってきたのは期待外れの、聞き飽きた、嬉

しくもなんともはい褒め言葉だった。

　がっかりした。

　多分これが一番正しい表現だ。

　モヤモヤの答えをもらえると思って来たのに、むし

ろ気分が悪くなる。

　期待ハズレで、がっかりした。

　何より、お母さんが本気で良かれと思ってそれを口

にしたことが、私にとって一番衝撃的だった。

　本当に私の悩みを一ミリもわかってないんだなって

思った。

　かなり詳しく話したはずだ。
　
　それでもわからないのは何故なのか。

　理解できないのか、理解する気がないのか。

　どっちなんてわからなかったけど、なぜかすぐに諦

めがついた。

　話してもしょうがないって、頭が先に理解したのか

もしれない。

　どうせわかってくれないって。

　それって意外とかなり辛いことだ。

　結局、母への相談は、もやもやが一つ増えただけ

だった。

　父への相談も試みたが、なかなかする時間がなくて、

出来ずじまいだった。

　お母さんの件があって、期待できなかったからかも

しれないけれど。

　美空には小学生の時から悩んでるって相談してた

から、身長の話とか、私が嫌がることをしないでく

れる。

　それでも、勝手に自分で傷ついて悲しくなる事はた

まにある。

　それで美空に八つ当たりで冷たくしてしまう自分が

大嫌いだ。

　友達がいないとか、勉強ができないとか、そんなこ

とよりもずっと、自分を好きになれないってことの方

が辛くて苦しいと思う。

　自分とは一生付き合っていかないといけないんだ

から。

　私がもし美空だったらって、考えたことが何度か

ある。

小柄で可愛くて守りたくなる、私とは正反対の美空。

うらやましくて、妬ましくて仕方なくなることもある。

　なんで美空と仲良くしてるんだろうって。

　いくら私の背が高いからって、私より大きな子もも

ちろんいる。

　そんな子達と仲良くしたほうが、幸せになれるん

じゃないかって。

　何度か考えた。

　でも、美空から離れなかった。

　もちろん、離れて新しい友達を作るのが不安だか

らっていうのもある。

　でも、理由はそんなことじゃなくて、離れたくない

んだ、美空と。