「また明日!」

 「傘ありがとね!!」

 傘を佳穂に渡して、玄関の屋根に入る。

 佳穂を見送ってから、家に入って、気持ち悪いから
すぐにお風呂に入った。

 白でまとめられているそこそこ広いお風呂。

 雨の日の温かいお風呂は、やっぱり気持ちいい。

 じめじめしてなくてさっぱりする。

 うちは冬以外は湯船を沸かさないから、今日はシャ

ワーだ。

 髪を洗いながら考えた。

 今日のモヤモヤについて。

 私は背が高い。その上肩幅が広い。それで悩んだこ

となんて数え切れない。

 ほとんどの男子が私より小さいし、女友達と並ぶと

きも目立つ。

 女なのにでかくて強そうとか、やっぱり悩んでしま

う。

 美空は背が高くはない方だから、やっぱり隣に並ぶ

と私が巨人族だ。

 美空は小柄で顔も可愛いから、その隣りにいる巨人

でフツ面な私は、やっぱり引き立て役に見えると思う。

 美空はきっとそんなこと絶対思ってないだろうけど。

 「背が高くてかっこいい」とか「私もしずくぐらい

高くなりたーい」って、よく色んな人に言われる。

 でも、全然褒め言葉として受け取れない。

 ほんとはみんな背低いほうが可愛いって思ってる

のに、そう言ってくるんじゃないかって思ってしまう。
 
よく小さい友達が私に抱きついたり、寄りかかった

りしてくる。

 そうゆう時、絶対自分可愛いと思ってやってるな。

って思っちゃって、背が高いから利用されてるって考

える。

 だって、そんなにくっついても、可愛いのって背が

小さい方だけだ。

 背が高い方はほんとにただの引き立て役にしかなら

ない。

 そういうところを男子に見てもらいたいんだろう。

 けど、私だって男子に可愛いって思ってもらいたい。

 引き立て役を好きでやってるわけじゃない。

 だいたい、なんで私が背高いの悩んでるって知ってる

のに、高身長が目立つようなことしてくるの?

 そんなの簡単。

 自分のほうが大事だからだ。

 人って結局自分のことしか考えてない。

私だってそうだ。

 私がもし低身長だったら、私もそうしたのかもしれ

ない。

 それでも、やっぱり辛いし悔しい。

 私は一生小さくて可愛い小動物系女子にはなれない

から。 小さい頃は平均ぐらいの身長だったのに、小

学校高学年ぐらいから高身長になっていった。

 どんどん伸びていく背に、すごく不安になって、お

母さんも抜いた。

 家で一番小さい末っ子だったのに、一番小さくなく

なってしまったことがすごくショックだった。

 変わっていくのが怖かった。

 身長がすべてじゃない。みんなそう言う。気にしす

ぎって。

 そんなありふれた言葉の意味ぐらい理解してる。

 けど、ずっと悩んでる私に、聞いたばかりのあなた

が何を言うの?って思ってしまった。

 そんな軽々しく言わないでって。

 ずっとイライラしてた。ムカムカして、何もかもが

嫌になった。

 自分の性格の悪さに嫌気が差した。

 負の感情が一つでてきたら、つながっていって、ま

るで負の連鎖だった。

 鎖みたいに、何をしてても頭の片隅についてくる。