「これは流石に世紀末だね」

 となりで美空がつぶやく。

 苦手な先生はやっぱり人も集まらないらしくて、

それぞれ二人ずつ枠があるのに、一つも埋まってなく

て、すっからかんだ。

 私はこういうとき、誰かが言ってくれるのを待つ、

勇気も責任感も正義感もないだめな人間だ。

 そんな自分にいつもモヤモヤしながらも、自分が行

くという選択はしない。いつだって人が行くのを待っ

て、誰かいってくれたら安心してお礼を言う。

それがきっと私で、私のこれから先の人生だって、

そんな感じなんだろう。さっき美空に言われた、つま

らない平凡な人生って言葉も、あながち間違ってない

のかもね。なんて、意味のないことを考えた。

 その時、

 「私、英語にいきます。」

 右斜め後ろから聞こえてきた。

 すごく凛としたきれいな声で、自然と体ごと振り向

いた。

 ーーーー目があった。

 思わず目を逸らしてしまいそうなほど強い瞳で、で

もずっと見ていたいほど深い瞳だった。

 何秒目があっていたのかはわからない。

 5秒くらいあったかもしれないし、たったの1秒も

なかったのかもしれない。

 私には、一瞬にも永遠にも思えた。

 「お、じゃあ国語係はもう一人、総合は二人、譲る

人を決めなさい。」

 そんな担任の声で、世界が戻ってきた気がした。

 私もすぐに前を向いたけれど、きれいな透き通るよ

うな瞳が、脳裏に焼き付いて離れなかった。

 あんなに完璧な人がいるんだってぐらい整った容姿

で、細いけれど健康的な白い身体も、くりっとした二

重の目も、うすい薔薇色の唇も、全部が美しかった。

 きっと「綺麗」って言葉は、あの子のためにあるん

だなって思った。

 神は二物を与えすぎってよく思っていたけど、この

人はそんなレベルじゃない。よく今まで気づかなかっ

たなってぐらい。二物どころか百物ば余裕で与えて

るよ。

 そんなしょうもないことを、一日中考えていた。