この季節、街はクリスマスのデコレーションで煌びやかに彩られていた。行き交う人々の表情も、どこか浮き立っているように里桜には映る。
クロシェバッグが届いてから、もう二ヶ月。あのステッチに気づいてからも、同じ月日が過ぎていた。けれど、それは彼女が望む穏やかな時間ではない。
いまだに解けない謎――なぜ松本と同じステッチなのか。胸の中には晴れない靄。そして初めて知った『嫉妬』という感情。
やがて彼女の中で、新しい答えが形になっていた。松本主任と、七階ソフトウェア開発部の佐藤香は婚約していて、いずれ結婚するのだろう、と。
(主任が誰と結婚しようが、私には関係ない……よ)
小さく呟いて、自分に言い聞かせる。
そんな中、アパートにゆうパックが届いた。差出人はフェアリーヤーン。先月オーダーした、憧れのシルクヤーンのストールだった。
けれど以前のように、大きな喜びは胸に広がらない。封を開ける指先は、どこかぎこちない。
淡い桜ピンクのストール。春に使おうと思って選んだ色だが、今の寒さの中でもふんわりと首に巻き、コートを羽織れば十分に温かい。
両端には彼女専用の、そう『特別』なはずのステッチが施されていた。そっとなぞる指が微かに震える。
(初めてこのステッチを見たときは、特別扱いされたみたいで嬉しかったのに……)
重い感情が再び心にのしかかる。思い出すのは、同じステッチのメガネケースを持つ松本と佐藤香のこと。そして、気づかぬふりをしている自分自身の想い。
封筒の中から、ふと一枚のカードを見つけた。
『いつも大切に使ってくださりありがとうございます。毎日の中で、ほんの少しでもあなたを包み込むぬくもりとなりますように』
(……やっぱり、このお店のオーナーさんは素敵な人だなあ)
思わず口角が上がり、柔らかく微笑んだ。
優しい言葉が胸の奥に差し込む。冷たく凍えた心を、そっと解かすように。まるでこのストールのぬくもりのように。
クロシェバッグが届いてから、もう二ヶ月。あのステッチに気づいてからも、同じ月日が過ぎていた。けれど、それは彼女が望む穏やかな時間ではない。
いまだに解けない謎――なぜ松本と同じステッチなのか。胸の中には晴れない靄。そして初めて知った『嫉妬』という感情。
やがて彼女の中で、新しい答えが形になっていた。松本主任と、七階ソフトウェア開発部の佐藤香は婚約していて、いずれ結婚するのだろう、と。
(主任が誰と結婚しようが、私には関係ない……よ)
小さく呟いて、自分に言い聞かせる。
そんな中、アパートにゆうパックが届いた。差出人はフェアリーヤーン。先月オーダーした、憧れのシルクヤーンのストールだった。
けれど以前のように、大きな喜びは胸に広がらない。封を開ける指先は、どこかぎこちない。
淡い桜ピンクのストール。春に使おうと思って選んだ色だが、今の寒さの中でもふんわりと首に巻き、コートを羽織れば十分に温かい。
両端には彼女専用の、そう『特別』なはずのステッチが施されていた。そっとなぞる指が微かに震える。
(初めてこのステッチを見たときは、特別扱いされたみたいで嬉しかったのに……)
重い感情が再び心にのしかかる。思い出すのは、同じステッチのメガネケースを持つ松本と佐藤香のこと。そして、気づかぬふりをしている自分自身の想い。
封筒の中から、ふと一枚のカードを見つけた。
『いつも大切に使ってくださりありがとうございます。毎日の中で、ほんの少しでもあなたを包み込むぬくもりとなりますように』
(……やっぱり、このお店のオーナーさんは素敵な人だなあ)
思わず口角が上がり、柔らかく微笑んだ。
優しい言葉が胸の奥に差し込む。冷たく凍えた心を、そっと解かすように。まるでこのストールのぬくもりのように。



