込み上げてくる思いに胸が張り裂けそうで、足が勝手に動いた。
 

包帯を拾い集めてくれる看護師に「ごめんなさい」とかろうじて呟くと、そのまま廊下を飛び出した。

 
建物を抜けると、むっとする夏の夕方の空気が肌にまとわりつく。
 

それでも息を切らしながら走った。
 

心臓が壊れそうに早く打つ。
 

涙で視界が滲んでも止まれない。

 
たどり着いたのは、いつも彼と星を眺めた浜辺だった。
 

夕陽が沈みかけ、空と海が赤く染まっている。
 

砂浜に膝から崩れ落ちると、両手で顔を覆った。


「いやだ…いやだよ…勇さんが……」
 

声が嗚咽に変わり、砂に落ちる涙で頬も手のひらも濡れていく。