「…美緒」
 

後ろから声をかけられ、振り返ると勇さんが立っていた。
 

月明かりに照らされたその顔は、昼間の勇敢な軍人のものとは少し違い、どこか疲れと優しさをにじませていた。
 

「ひとりで、ここにいたのか」

 
「…はい。なんか、落ち着かなくて」
 

視線を星に戻す。
 

彼は隣に腰を下ろし、しばらく黙って波を眺めていた。

 
やがて、低い声でつぶやく。


「…さっき、あの街を見て…心が折れそうになった」
 

その横顔には強さと同時に、人間らしい弱さが浮かんでいた。