波に飛び込んではしゃいでいると、近くで訓練を終えた軍人たちが何人かこちらに気づいた。
「おい神谷、ずいぶん楽しそうじゃねぇか!」
「俺たちも混ぜてくださいよ!」
若い兵士たちは次々と靴を脱ぎ捨て、海に駆け込んでくる。
多くの水しぶきが上がり、悲鳴と笑いが混じった声が響く。
「ちょ、やめてください!冷たい!」
「ははっ!姉さんまで泳いでるのは珍しいな!」
「姉さんじゃないです、美緒です!」
砂浜では、救護所の看護師たちが桶を抱えながら立ち止まり、楽しそうな光景に目を細めている。
「…ほんとに子どもみたいね、神谷さんたち」
「でも、いいじゃない。戦争ばかりで、笑う時間なんて少ないんだから」
看護師同士で話す声が聞こえる。
会話を交わしながら、遠くから私に向けて小さく手を振ってくれている。
私も笑顔で振り返した。
勇さんは先輩や後輩たちに水をかけられながら、私のそばにきた。
「ほら、囲まれてるぞ」
「勇さんが完全に的にされてるじゃないですか!」
二人で笑いながら水を掛け返す。

