私が言葉に詰まっていると、そばにいた看護師が口を開く。


「あなた…美緒ちゃんって言ったっけ?血は平気?」


「あ…はい、大丈夫です」


そういうと看護師の顔がパッと明るくなる。


「衣食住はここで保証してあげるから…少しだけ看護師の仕事を手伝ってもらえないかしら?」


驚きながらも、真剣な眼差しの彼女を見上げて頷いた。


「…はい、わかりました」




こうして私は、いつ終わるかもわからない救護所での生活を始めることになった。


食事の配膳や掃除、患者の手当の補助。


初めはぎこちなさもあったけれど、看護師のキクさんや、神谷さんがそばにいて声をかけてくれる。


その些細な声かけが、私の胸の奥は少しずつ温かさで満たされる。


この場所で、彼らと過ごす時間が、海の恐怖で震えた心をそっと癒してくれるのを、少しだけ感じていた。