専務と約束をした土曜日。私は鏡の前で何度も服装を確認した。相手は取引先の社長だという。失礼があってはならないし、偽物の婚約者だとバレてもいけない。
「これで大丈夫だよね……」
念入りに確認してドキドキしながら待ち合わせ場所へ向かうと、専務は電話をしていた。私は邪魔にならないよう静かに近づいた。
(お見合い相手が現れて修羅場になったりしないよね……)
そんなことを考えながら待っていると、電話を終えた専務がこちらを向いた。
「お待たせ、早川さん。」
そう言って、専務は私をじっと見つめた。
「あの……何かおかしいでしょうか。」
「ううん。すごく可愛いね!そういう服、俺は好き!」
一瞬にして顔が赤くなった。オフの専務は本当に意地悪だ。
「お見合いということでしたので、可愛くしたんですっ!」
「ふふふ、そっか。でも残念ながら今日の見合いはキャンセルになってしまったよ。」
「えっ?」
負けじと嫌味っぽく言ったら、変化球で返されてしまった。お見合いが中止なら私は必要ない。
「そうでしたか。では、失礼します。」
くるりと専務に背を向けると、腕を掴まれた。
「待ってよ。見合いはなくなったけど、これから行くところがあるんだ。着いてきて。見合いと同じようなものだからさ。」
そう言って専務はスタスタ歩き出した。専務は足が長いから、ついていくのが大変──なんてことはない。篠原さんと奈々美も歩くのが速いのだ。
「早川さんって歩くの速いんだね。女の人で一緒に歩ける人は初めてかも。」
「わかっていらっしゃるのでしたら、もう少しゆっくり歩いてくださってもいいんですよ?」
速く歩くことに慣れてはいるけど、このペースで歩き続けるは大変だ。嫌味を言ったつもりだったけど、専務は「そうだね。」と言ってゆっくり歩いてくれた。
「これで大丈夫だよね……」
念入りに確認してドキドキしながら待ち合わせ場所へ向かうと、専務は電話をしていた。私は邪魔にならないよう静かに近づいた。
(お見合い相手が現れて修羅場になったりしないよね……)
そんなことを考えながら待っていると、電話を終えた専務がこちらを向いた。
「お待たせ、早川さん。」
そう言って、専務は私をじっと見つめた。
「あの……何かおかしいでしょうか。」
「ううん。すごく可愛いね!そういう服、俺は好き!」
一瞬にして顔が赤くなった。オフの専務は本当に意地悪だ。
「お見合いということでしたので、可愛くしたんですっ!」
「ふふふ、そっか。でも残念ながら今日の見合いはキャンセルになってしまったよ。」
「えっ?」
負けじと嫌味っぽく言ったら、変化球で返されてしまった。お見合いが中止なら私は必要ない。
「そうでしたか。では、失礼します。」
くるりと専務に背を向けると、腕を掴まれた。
「待ってよ。見合いはなくなったけど、これから行くところがあるんだ。着いてきて。見合いと同じようなものだからさ。」
そう言って専務はスタスタ歩き出した。専務は足が長いから、ついていくのが大変──なんてことはない。篠原さんと奈々美も歩くのが速いのだ。
「早川さんって歩くの速いんだね。女の人で一緒に歩ける人は初めてかも。」
「わかっていらっしゃるのでしたら、もう少しゆっくり歩いてくださってもいいんですよ?」
速く歩くことに慣れてはいるけど、このペースで歩き続けるは大変だ。嫌味を言ったつもりだったけど、専務は「そうだね。」と言ってゆっくり歩いてくれた。



