早川麗華の尋問は厳しかったが、詩織との関係を一定程度認めてくれた。だが詩織と結婚するためには、さらなる関門が待っている。

「総帥と会長か……」

 父の話によると、総帥は麗華と詩織の父親らしく、人当たりがいい人だという。だが、会長に関しては会ったことがなく、どんな人物なのか全く情報がないらしい。

 同じように早川財閥から出資を受けている企業の社長も軒並み会長とは面識がないらしい。総帥が父親だとしたら、会長は兄である可能性が高いが定かではない。

「麗華さんよりも厳しいのか……何を聞かれるのだろう……」

 だが弱音を吐いてはいられない。詩織と結婚するためには、いずれ通らなくてはならない道だ。

 スマホのバイブ音がして、自分のスマホを確認したが、何も届いていなかった。無意識に音の根源を探して周囲を見回すと、詩織のスマホが光っていた。

(詩織はMAKOTOが好きだったのか……!)

 詩織のスマホの画面いっぱいにアイドルグループLIMINOCT(リミノクト)のメンバーMAKOTOの写真が映し出されている。

 好きな芸能人の話はしたことがなかった。壁紙にするくらいだから、相当なファンなのだろう。今度、聞いてみようかと思っていると、再び詩織のスマホが鳴ってポップアップが表示された。

 一瞬で消えたが、文章が目に焼き付いて離れなくなった。送り主の名前は『誠』。アイコンは、LIMINOCTのロゴ。

『来週、日本に帰る。早く会いたい。』

 遠くの空で雷の音が聞こえた気がした──