『大丈夫?体調崩してない?』

 メッセージが来なくなって数週間が経ったある日、突然専務からメッセージが届いた。

『大丈夫です。ちょっと寂しかったですけど。』

 嬉しくなってすぐに返信した。久しぶりだったからか、本音が出てしまった。するとすぐに電話がかかってきた。

「詩織!俺も寂しい!早く帰りたいっ!」

 電話の向こうからは、お祭りのような騒がしい音が聞こえてくる。

「電話してくださってありがとうございます。声が聞けてよかったです。」
「俺もだよ。また連絡するね!メールも電話も、やっとできるようになったから!……ん?」

 専務は電話をしながら、電話の向こうにいる人物と話している。でも言葉が──英語だ。

「あ、ごめん。」
「専務?今どこにいらっしゃるのですか?」

「今日からシンガポールなんだ。」
「シンガポール!?」

「急に出張になっちゃったから心配だったと思うけど、俺は詩織に会えることだけを考えて頑張ってる!週末には帰れると思うから。また連絡するね。」

(だから会えなかったんだ……)

 海外にいて繋がらなかっただけだったのかもしれない。連絡が来なくて不安になっていたことが、馬鹿らしく思えてきた。

『早く会いたいです。』

 思わずメッセージを送ると、またスマホが鳴った。