熱を込めた言葉に、神奈は一瞬だけ欲情を帯びた目で俺を見返す。

「……ううん。」

けれど、その瞳の奥には深い寂しさが宿っていた。

「教師と付き合うなんて、マジ勘弁。」

軽く笑ったその声は、なぜか少し震えているようにも聞こえた。

神奈は俺の手をそっと外し、机の横をすり抜けていく。

ドアが開き、強い夏の日差しが差し込んだ。

制服の背中が視界から消えるまで、何も言えなかった。

静まり返った教室には、蝉の声と俺の鼓動だけが響いていた。

残された俺は、ただ茫然と立ち尽くしていた。