そう言ってゆっくりと起き上がり、背中を向けた。

制服の乱れを直す指先は、どこか淡々としている。

「そういうの、求めてないから。」

その背中を見ていられなくて、俺は思わず抱きしめた。

「だって……俺が最初の男だよ?」

静かな声で、責任を取るつもりだった気持ちを吐き出す。

けれど神奈は振り返らず、ただ小さく笑っただけだった。

その笑顔が、何よりも遠く感じられた。

「ひと夏の経験、してみたかっただけ。」

神奈のその言葉が、俺の胸を鋭く断ち切った。

目の前の少女は、もう子どもではない。

俺を通り過ぎ、大人へ向かおうとしている――そんな眼差しだった。

「嫌だ!」

思わず声が出て、俺は彼女の腕をつかみ、そのまま唇を重ねた。

「俺がおまえの男になる。」