ひと夏の経験、五つの誘惑

「ああ、悪い。生徒の胸じゃ、あまり興奮しなくて。」

もちろん、嘘だ。指先から伝わる温もりに、心臓はとっくに早鐘を打っていた。

その動揺を、羽月は見逃さなかった。

唇に薄く笑みを浮かべ、ゆっくりと腰に手をかける。

布の擦れる音が保健室の静寂に響き、ハーフパンツが床へ滑り落ちた。

白い脚が露わになり、俺の視線を絡め取る。

「……いいよ。聡志だったら。」

その一言が、頭の奥に残っていた理性の欠片を簡単に吹き飛ばした。

距離が消え、熱を帯びた空気が二人を包み込んでいく。

最後の理性を、どうにか繋ぎとめようとした。

「……俺と付き合うか。」

抱き寄せたまま、耳元で低く囁く。

羽月は一瞬だけ瞳を伏せ、そして静かに頷いた。

その仕草に、胸の奥の緊張が解けていく。