「飲めるか?」

問いかけても、羽月は首を縦に振っただけで、手どころか身体全体が震えている。

コップをそっと唇に当てるが、傾けた水はすぐにこぼれ、顎を伝ってシーツに落ちていった。

このままではうまく飲ませられない。

ほんの一瞬、ためらいがよぎる。しかし、他に方法はなかった。

「……口でいいか。」

羽月はわずかに目を開き、うんと小さく頷いた。

「聡志先生なら……」

その言葉が、不思議と迷いを消した。

俺は紙コップから一口だけ水を含み、羽月の顔に近づく。

彼女の吐息が頬にかかる距離まで寄り、そっと唇を重ねる。

冷たい水が、静かに彼女の口の中へと流れ込んでいった。

「ん……」

小さな声とともに、羽月の喉が動き、ごくりと水を飲み下す感触が唇越しに伝わった。

そのわずかな反応に手ごたえを感じ、俺は再び紙コップから水を含む。