そんな時だった。

「先生、大変! 羽月が熱中症で倒れて!」

廊下から飛び込んできた女子生徒の声が、思考を一瞬で現実に引き戻す。

椅子を蹴るように立ち上がり、急いで廊下へ出る。

向こうから二人の生徒が羽月を支えながら歩いてくるのが見えた。

真っ赤な顔、額には玉のような汗。制服の胸元が乱れ、苦しそうに唇を噛んでいる。

「保健室だ、急げ!」

俺は羽月の肩に手を回し、自分の腕でその体を支えた。

細い肩は驚くほど熱く、指先にまで熱が伝わってくる。

神奈のことを考えていた頭の奥に、別の熱がじわりと広がっていくのを感じながら、俺は足を速めた。

保健室に着くと、俺はすぐに冷蔵庫を開け、奥にあった冷却ジェルを布で包んだ。

羽月の額にそっと当てると、熱が指先にまで伝わってくる。

「小野、大丈夫か?」

ベッドに横たわる羽月は、額に汗を浮かべ、唇をわずかに開いて荒い呼吸を繰り返していた。