「眠かったら寝てていいよ。」
「ユウくんは寝ないの?」

「寝ない。」
「ゲームするから?」

「一緒に寝たら襲うかもしれないから。」
「ぅ。」

私はユウくんに襲われたことがある。でも、それは私がユウくんを試したから。あの時は、相手がユウくんなのに怖かった。

(でもなんかおかしくない?)

そういう目的ならお姉さんを呼べば良いのに、なんで私を呼んだんだろう。

「ねぇ、ユウくん。いいの?私で。」
「ん?」

「そういうことやりたいなら帰りますけど?」
「……」

「ユウくん?」

顔を覗き込むと、ユウくんはゲームを止めた。

「イチカが帰りたいなら帰っていい。」
「なにそれ、呼んだのユウくんじゃん!」

「抱けない女がいても仕方ないと思ってさ。」

ユウくんはゲームの続きを始めた。

「む。」

やっぱりなんか引っかかる。ユウくんは私を抱かない。それはわかってるのに、私が呼ばれた理由(わけ)は?

「ユウくんは、どうして私を呼んだの?」
「呼んでって言われたから。」

それはそうだけど。

「私とゲームしたかったわけじゃないの?」
「弱いのに?」

ユウくんは笑ってる。いい匂いのするお姉さんじゃなくて、私じゃなきゃだめなことってなんだろう。

「ユウくん、私に何して欲しい?」
「掃除かな〜」

「自分でやんなよ、掃除くらい!」
「ははは。」

はぐらかされてる気がする。でも、ゲームはやらせてくれないし、特にやることもない。

「しょうがないですねぇ。」

私はユウくんの部屋の片付けをすることにした。と言っても、綺麗だから大してやることもない。結局部屋の中をうろうろしただけだった。

でも、そのせいで色々見てしまった。

「歯ブラシが3本……」

ユウくんが使ってるってことにしておこうかな。ははは。

「イチカ?」
「ん?」

いつのまにかユウくんはゲームをクリアしていた。

「もう終わったんだ。早いねー」
「手、繋いでいい?」

急なお願いにドキッとした。こんなこと言われたのは初めてだ。

「え、なに?どうしたの?」
「無理?」

「いや、べつにいいけど。」

ユウくんは私の手を握った。手を握ることくらいは平気。でもちょっと緊張する。なんで急に手を繋ぎたいなんて言い出したんだろう。