幼なじみのユウくんは、私を抱かない。

「んじゃ、寝ようかな。」
「えっ──!?」

ユウくんは私を押し倒して、覆い被さってきた。ユウくんは私の手を掴んでじっと見下ろしている。

「どっ……どうしたの?」

真面目に聞くと、ユウくんはふっと笑った。

「全然怖がらないじゃん。」

(確かに。)

前に押し倒されたときは怖かった。相手がユウくんだとわかっていても逃げたいと思った。でもなぜか今は平気。

「今日はベッドで寝ような?」
「ソファーだと体痛いもんね。」

ユウくんは私の手を引いて起こしてくれた。

「寝ていい?」
「うん。」

ベッドに横になると、ユウくんは私を抱き枕のように抱きしめた。

「ふぁ……すぐ寝られそう。」
「高級抱き枕ですから。」

「買おうかな。」
「ふふふ。お買い上げありがとうございます。」

「イチカ、明日も来てくれない?」
「明日?」

「忙しい?」
「うーん、ちょっとシフト見てみる。」

「明日だめだったら明後日でもいい。」

(なんか毎日来てって言われてるみたいじゃん……)

ユウくんに抱きしめられているとドキドキする。ユウくんは私を抱き枕としか思っていないけど、私は──

(好きなんですけど。)

ユウくんは私の幼なじみ。
なんでも相談できる友達。

恋人にはなれない。

(ちょっと寂しいな。)

私はユウくんの胸に耳を当てた。ユウくんの心臓の音が聞こえる。私もよく眠れそうだ。