幼なじみのユウくんは、私を抱かない。

「待って、イチカ。」

ユウくんに腕を掴まれて、ソファーに引き戻された。なんとなくユウくんの返事は聞きたくない。

「女の人断らせてまで相談しといて、こんな感じになっちゃってごめんね。わざわざ断らなくて良いからね。わかってるから。改めて断られると、傷つくから言わなくていい。」

失恋することはわかってるけど、あえて傷つきたくない。

「俺は『好き』っていう感情はわからない。」

そうだよね。

「でも、イチカといると楽しいよ。この前飯行ったのも、ゲームしたのも……」
「あれ、楽しいって思ってたの!?」

知らなかった。ご飯食べてる時も反応薄いし、ゲームも散々馬鹿にされた。楽しんでるとは思わなかった。

「楽しいって言ったじゃん。」
「聞いてないよ。」
「聞けよ、ふつーに。」

ユウくんの「楽しい」を聞き逃してしまったことは残念だ。でも、私と一緒にいることが楽しいと思ってくれた。それがわかっただけでも満足だ。

「じゃあ、またゲームやろう?今度は映画も見ようよ!」
「……いいけど。」
「じゃあ、また連絡して!すぐ来るから!」

よかった。告白しても、ユウくんと友達でいられる。私は再び立ち上がった。

「帰るの?」
「うん。さっきの女の人が来るでしょ?」
「……あぁ、まぁ。」

ユウくんはあっさりしてるけど、女の人の方はそうじゃないと思う。今でも呼ばれるのを待っている気がする。

「女の人がいない時に呼んでね?部屋の中でバッティングするのは勘弁なので。」

「イチカ……」
「ん?」

「泊まってかない?」
「女の人が来るんでしょ?」

「イチカがいるなら呼ばないから。」

また私は代打だ。でも、ユウくんに頼られて嬉しいと思ってしまっている。

「雪見だいふくないの?」

代打なら見返りが欲しい。なんちゃって。

「雪見だいふくはないけど、pinoはある。」
「食べる!」

今度はpinoに釣られて泊まりを決めてしまった。