幼なじみのユウくんは、私を抱かない。

サークルのイベントで忙しくしている時も、私は何度もスマホを確認した。

「イチカ、この前オープンした喫茶店知ってる?」
「知ってるよ。めちゃくちゃ人気なんだってね!」
「一緒に行こ?デートしよ、デート。」
「いや〜ちょっと遠慮しとくわ。忙しいし。」

以前の私だったら、軽く誘われただけで悩んでいた。自分で決められず、どうしたらいいかってユウくんに相談してた。でも今の私は平気で断ることができる。

ユウくんに王子様を待てって言われたからなんだけど、王子様は本当に来るのかな。

スマホを見ても、やっぱりユウくんから連絡は来ていない。

(今日も女の人といるのかな……)

私にできることには限界がある。ユウくんが求めてるのは、いい匂いのするお姉さんなのだろう。

(私じゃだめなのかな……)

ユウくんは私を抱かない。だけど、ユウくんは男だ。私には言わないだけで、そういう気持ちもあるはずだ。だから私を呼ばないんだろう。

それでも、私はスマホを見ていた。