2.
「高原さん」
その声にわたし―—高原聡子は顔を上げた。
私立櫻高校。南校舎二階、二年三組。そこが今のわたしの居場所。
あんまり楽しい場所じゃない。クラスメイトはいつも何かと騒いでいるし、先生たちは無駄に偉そうだ。
「高原さん?」
「……はい」
目の前にいるのは……木下成美だ。その後ろには司綾香に関みつ葉。
クラスでも一番派手な女の子たちは毎日毎日、わたしのところに来る。
にやついているのはわたしをバカにしているからと、知っている。
「掃除当番、変わって」
「……どこですか」
「角の女子トイレ。うちら忙しくてね」
「わかった」
木下たちはさらに意地悪に笑いながら、
「さびしーね。男、いないって」
そう言い残してわたしから離れていった。
わたしはあの人たちが掃除をしているところも、委員会に出ているところも、見たことがない。
