1.

今でもわたしは覚えてる。それはとってもかわいい曲だった。
うさぎが跳ねてるみたいに軽やかで、なのにオランジェットのような苦さも感じる。
その中でひと際優しく歌うのがあなた―—葵だった。

つらいことも忘れさせてくれる、そんな声に自然とわたしは泣いていた。
三分ちょっと。あっという間に耳は別の女の子たちの歌にさらわれてしまったけれど、


わたしはずっと、あなたの声を噛み締めていた。