妹の代わりに告白を断りに行ったら付き合うフリをすることになっちゃいました⁉

「俺のことどう思ってんのか知らねーけど、別に女殴る趣味ねーし。あんま怖がられると、傷つくんだけど」

 高遠くんが、はぁーと大きなため息を吐く。


 いやあ、そんなに高遠くんのことが怖いわけじゃないんだけどなあ。

 そりゃあ最初は怖かったけど、今はあまり高遠くんに怖さを感じてはいない。不思議なんだけど。


 それよりも、美月を怒らせるんじゃないかっていう方が、今のわたしには重大問題だ。


 でも、なんだか高遠くんのことも放っておけないんだよね。


「わ、わかった。犯人を見つけるまで……ってことだよね?」

「まあ、そうだな」


 別にわたしたちが付き合うフリをしたからって、犯人がわかるとは限らない。

 けど、こんなことをされて怒る高遠くんの気持ちもわかるから。

 わたしにできることがあるなら協力してあげたい……なんて思うのはおかしいかな。

 はじめてしゃべったのに。


「柊」

「え?」

「名前。付き合ってんなら、苗字呼びはおかしいだろ」

「そ、そっか。そうだよね。えっと、わたしはや……美月」

「美月?」

 高遠くんが、ぎゅっと眉間にシワを寄せると、おもむろに立ち上がる。

 そしてわたしの目の前までつかつかと歩み寄る。

「え、な、なに?」


 わたし、なにかやらかした?

 っていうか、美月のことが好きならさすがに身代わりだって気付いちゃうよね⁉


 ど、どうしよう……わたし、殴られる⁉


 高遠くんが握りしめた拳をわたしの顔に向かって——。


 怖い……!