高遠くんが、チッと大きく舌打ちする。

「っざけんな」


 高遠くんも、そのことに気付いたみたいで、手に持った手紙をぐしゃっと握り潰す。


「あんた、犯人の心当たりは?」


 高遠くんに尋ねられ、ぶんぶんと首を左右に振る。


 もしもわたしが犯人だったら、さっきの手紙みたいに捻り潰されるんじゃ……。


 そんな怖い想像をして、ぶるるっと体を震わせる。


「た、高遠くんは……」

 ギンッと睨まれ、途中で言葉を飲み込む。


 なんかいろんなところで恨みを買っていそう……あくまでもイメージだけど。


「ねえよ。んなもん」

 そう言うと、高遠くんは屋上の周囲に張り巡らされた柵を背にどさりと座り込む。

「ぜってー許さねえ」

 ぼそぼそとそうつぶやく声が聞こえる。


 ……そっか。きっと好きだったんだね、美月のこと。

 だから、この呼び出しの手紙がウソだったってわかってショックなんだ、きっと。


「あんたは怒んねえのかよ」

「いえ、わたしは……どちらかというと、ホッとしたといいますか……」


 だって、もしも本気の告白だったとしたら、それを断らなきゃいけなかったわけで。

 しかも美月の代理で。

 そのことを考えたら、イタズラで呼び出されたってオチの方が、数倍気分的には楽だ。


「……そりゃそうか」

 高遠くんのつぶやく声が、なんだか沈んで聞こえる。