「こ、この手紙、高遠くんが出されたものですよね?」

 念のため持ってきた手紙を高遠くんに掲げて見せる。

 わたしじゃなくて美月宛て……だけど。


 美月に似せるため、普段よりおもいっきり短くしたスカートが、なんだか落ち着かない。

 それに髪型だって。

 できるだけ顔を隠すためにいつもは下ろしている長い黒髪をポニーテールにして、飾りのリボンも美月に借りたもの。

 全体的にスカスカして、隠れる場所がない気がして、すごく不安になる。

 制服のブラウスだけは、5月も後半に入り、クラスの大半の生徒は半袖に変わっているけど、いつもの長袖のまま。

 だって、わたしが半袖を着たら……きっと美月じゃないってすぐにバレてしまうから。


「は? 俺が手紙? んなもん書くかよ」

 高遠くんがダルそうに言う。


 長い金髪をうしろで一つに束ね、大きく開けた半袖の開襟シャツの胸元にはインナーの赤いTシャツが見えている。

 ヤンキーだというウワサくらいは知っていたけど、こうやって目の前で見た高遠くんの第一印象は、カラフルな人だなーっていうこと。


「そんじゃあ、これ書いたのもおまえじゃないとか言うつもり?」

 高遠くんが、手に持った手紙をヒラヒラと振る。


「わ、わたしじゃないです!」


 でも、これっていったいどういうこと?

 誰かがわたしと高遠くんをワザと呼び出した……?

 つまり、イタズラってこと?