妹の代わりに告白を断りに行ったら付き合うフリをすることになっちゃいました⁉

「高遠くん、お願いがあるんだけど」

 意を決して、そう口にする。

「なに?」

「もしよかったらわたしの手、に、握ってみてもらえないかな」

「は⁉ いやムリだって。だって……」

 高遠くんが戸惑ったように目を泳がせる。

「あ、ご、ごめんね、ヘンなお願いして。そうだよね。高遠くんにだって今好きな人がいたりするよね。なのに、わたしの手を握れだなんてヘンなこと言って、ほんとごめんね。忘れて」

「……そりゃあ好きなヤツはいるけど……そいつ、俺のことが怖いみたいでさ。ちょっと触れられただけで、多分すげー恐怖を感じると思うから。だから、怖がらせたくないんだよな」

 高遠くんが、わたしから目を逸らしてぼそぼそと言う。


 ねえ、ひょっとしてそれって……。


「その人、今なら高遠くんに触れられても大丈夫なんじゃないかなあ」

「な、なんでそう思うんだよ」

「だって、その人も今はきっと高遠くんのことが……好き……だと思うから。だから、試してみたいんじゃないかな。前みたいに、怖いって思わないかどうか」


 わたしが差し出した左手を、高遠くんがじっと見つめてくる。


「もし、そいつの手を握ることができたら、俺、そいつと付き合えるかな。フリじゃなくて。本当に」

「うん。大丈夫だと思うよ」


 わたしがにっこり微笑んで見せると、高遠くんはわたしの左手に向かってゆっくりと手を伸ばしてくる。

 だけど、途中でピタリと止まってしまう。


 だったら……今度はわたしの番だ。

 高遠くんの手にそっと近付いていくと、わたしは高遠くんの指先をそっと握った。



(了)