「……ごめんな、ムリに呼び止めて。俺の顔なんか本当は見たくなかったよな」

 高遠くんが申し訳なさそうな顔をする。

「ううん! そんなことない。それよりも、急にいなくなったから……」


 きっとまたわたしのせいで……って、自分を責めてた。

 高遠くんは、なんにも悪くないのにって。

 街で暴れたとか、退学とか、きっと誰かがおもしろおかしく流したデマなんだろうなって。


 膝の上できゅっと拳を握り締める。


「高遠くんは見たくないかもだけどね……ほらっ、昔の傷痕、うっすら見えるかなーくらいしかもう残ってないんだよ。もちろん痛くもかゆくもないし。だからね、もう高遠くんが気にする必要ないから」

「……でも、まだ痕が残ってる」

 高遠くんが、きゅっと眉間にシワを寄せる。

「俺のせいで……ごめん」

「違うの! わたし、もう高遠くんに謝ってほしいわけじゃなくて。わたしはもう大丈夫だって言いたかったの。それより……」


 そのとき、今までどうしても思い出せなかった『あのとき』の光景が、なぜか頭の中に鮮明に蘇った。


「ねえ、高遠くん。あのときの続きを聞かせて?」

「『あのとき』?」