「そうだ、弥生。気付いてないみたいだけどさ、高遠ってアイツだよ。三浦柊。ほら、弥生のその傷つけた男子」

「……え?」


 だって、あの子は親の仕事の都合で遠くに引っ越したって……。


「そ。あのあと弥生、あの子のこと超怖がってたでしょ? だから別の小学校に転校したの。なのにまさか同じ高校になるとはねー」


 わたし、あの子のこと、そんなに怖がってたの……?

 あの頃のことは、正直あんまり覚えていない。

 けど……わたしのせいで、柊くんは転校しなくちゃいけなくなったってこと?


 わたしのこと、柊くんは気付いてるの?

 気付いてるはずない……なんて言い切れる?


 むしろ気付いていないわけがない……よね。

 だからわたしに親切にしてくれてたってこと?


 ……そっか。そうだったんだ。


 手紙を出した犯人が美月だったってわかったときよりも、なんだかショックが大きい。


「そ、そうだったんだー。全然気付かなかったよ。教えてくれてありがとね、美月」

 ぎこちない笑みを浮かべると、わたしは拾ったノートを抱えて足早に職員室へと向かった。