「あーあ、ほんとつまんなーい」

「ちょっと美月。それはさすがにヒドイってー」

 職員室にノートを届けに行く途中、人気のない階段の方からきゃははと笑う声が聞こえてくる。


 美月と……瀬川さんの声?


「だってさー、『こんな手紙で俺のこと呼び出しやがって』ってめっちゃ怒ると思ったのに、あの二人がそのまま付き合い出すとか、マジでありえないから」

「っていうか沢村くんにフラれたからって、美月やりすぎだしー」

 言葉とは裏腹に、全然悪いとも思ってないような笑い声が響く。


 え、美月、沢村くんにフラれたの?

 っていうか、あの手紙を仕組んだの、ひょっとして美月だったってこと……?


 ガツンと頭を殴られたかのようなショックに、胸に抱えていたノートをばさばさっと落としてしまった。


「え、誰かいる?」


 バレた……!


 慌ててかがんでノートを拾い集めていると、「うっわ、サイアク」という美月の声が聞こえてきた。


「弥生、まさか高遠にこのこと言ったりしないよね?」

 美月の冷たい声が降ってくる。

「い、言わないよ? っていうか、なにを?」

 なんとかごまかそうとするわたしを瀬川さんがふんっと鼻で笑う。

「なにとぼけてんのよ。そういうとこ、ほんとムカつくんだけど」