「おい、帰るぞ」

「……? たかと……じゃなくて、柊くん⁉」


 6限まで終わり、のろのろとカバンの中に教科書なんかをしまっていたら、目の前に壁のように柊くんが立ちはだかった。


「片付け終わったか?」

「う、うん」

 慌ててカバンのファスナーを閉めると、柊くんがわたしのカバンの紐を掴み、自分の肩にかける。

「へ⁉」

「は? なんか文句でもあんのかよ」

「い、いや、そういうわけじゃ……」


 まさか、わたしのカバンを持ってくれるつもり?


「ほら、さっさと帰るぞ」

「う、うん」


 何事かとクラス中の視線が集まる中、そんなものは一切気にせず高遠くんが教室を突っ切って出口まで歩いていく。

 ……そしてその後ろをおどおどしながらついていくわたし。


「え、あの二人どうしたの?」

「春野さんにカバンを持たせるんじゃなくて、持ってあげてる……よね?」

「いや、マジであの組み合わせは意外すぎだろ」

 包み隠しもせずウワサする声がたくさん聞こえてくる。


 ですよね、ですよね。

 わたしだってなんでこんなことになってるのかわからないんだもん。