そう悟るまでの間わたしはいまか、いまかと待ちわびて、おばあさんの家の中で落ち着かず、朝から晩までそわそわしてましたの。その様子を心配したお婆さんが「いい、祇王ちゃん、この部屋から出ちゃだめよ、しばらくの間は。こうしてドアに鍵かけておきますからね」と云ってわたしをこの部屋に閉じ込めてしまったのです。あの日主人が去って行った方向にある、通りに面した出窓のある部屋に。わたしはそれからその出窓の張り出したところに陣取っては毎日毎日表を見て暮らしましたの。主人に似た人が通ると胸をどきどきさせて思わず後ろ足で立っては窓ガラスに前足をかけ、見送ったりしたんです。そんなわたしを「出窓の猫」とか「シャーロットの雌猫」とか云って近所でいくばくもなく評判になってしまいましたの。



