「び、びっくりした! ヒース、いつの間に……」
「今来たところ。それよりも僕だけ仲間外れにするなんてひどいじゃない」
ヒースが唇を尖らせる。顔は笑っていた。どうやら本気で言っているわけではないらしい。
アベルが首を横に振る。
「たまたまだよ。おまえこそなんでここにいるんだ? 行きつけか?」
「違うよ。そこの世間知らずのお嬢様がひとりでほっつき歩いているのが見えたから後ろからついてきたんだ。薄暗くなってきたから心配でね」
「あ、ヒース、見守ってくれてたんだ」
おそらく自分が危ない目に遭いそうだったら助けに出てくれる算段だったのだろう。さりげない優しさだ。
セシリーナはヒースに笑みかける。
「ありがとう、ヒース」
「べ、別に」
「なに照れてんだよ」
「照れてない!」
アベルがにやにやと突っ込んで、ヒースが憤慨している。なんだかんだで自分たちは仲良くなってきたと思う。
ケルヴィンが立ち上がって隣の椅子を引く。
「ヒース様、よろしければご一緒にお食事はいかがですか?」
「ああ、うん、ぜひ」
「で、さっきおまえが言っていた聖水の小瓶ってどういうことだ?」
アベルが問いかける。ヒースは肩をすくめた。
「さっき盗み聞きしたんだけれど、君たち、ウェルカムサービスとやらについて話していたみたいじゃない?」
「盗み聞き……」
「セシィ、いちいち突っ込むな。それでウェルカムサービスに聖水の小瓶はどうかって話か?」
「そう。この王都には女神教の巡礼者が多く訪れる。女神教のお膝元だからね」
「うんうん」
セシリーナもアベルもケルヴィンもふんふんと頷く。
ヒースが人差し指を立てた。
「だからさ、女神教に関する物は誰にでも例外なく喜ばれるわけ」
「なるほど。それが聖水っていうわけだな」
アベルが言うと、ヒースが祭服の内ポケットから小さな小瓶を取り出した。精巧な装飾の施された透明な瓶。中で薄青の液体が揺れている。ケルヴィンが小瓶に目をやる。
「それがヒース様の言う聖水の小瓶ですか。聖水の精製は神官様に、小瓶の製作は王都の雑貨屋に依頼しましょうか」
「良いですね! それなら雑貨屋さんにも仕事を回せるから喜んでもらえそう」
まさに一石二鳥だ。経済を回すという理念に合っている。
セシリーナはヒースがテーブルの上に置いた聖水の小瓶を覗き込む。
「それにしても綺麗な聖水ですね」
「僕が手ずから精製したものだからね。よかったらあげるよ」
「え、いいんですか!?」
まさか次期教皇候補お手製の聖水をいただけるとは思わなかった。びっくりするセシリーナに、ヒースは後ろ頭を掻く。
「いや、大したものじゃないけれど。それでも効果はあるはずだよ。ウェルカムサービスとして検討するなら試作品として使ってみてもいいんじゃない」
「うんうん。本当にありがとう!」
「だからそんな喜んでもらえるほどの物じゃないってば」
ヒースが気恥ずかしそうにしている。意外と照れ屋さんなのかもしれない。それにしてもさりげない優しさだ。
ケルヴィンが皆の顔を見まわす。
「さっそくですが次のダンジョン攻略ツアーで配ってみてはいかがでしょう。魔獣が活発化していることもあります。聖水は参加者の身を守ってくれるのではないかと」
「そうだな。魔獣は聖水の持つ聖なる力を嫌う。参加者から魔獣を遠ざけてくれるはずだ」
「それを加味すると聖水の小瓶をウェルカムサービスにするのは理に適ってますよね」
セシリーナは感心する。ヒースの名案に感謝するばかりだ。これでウェルカムサービスの内容は決まった。
セシリーナたちは次々と運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。ダンジョン攻略ツアーの開催が迫っていた。
「今来たところ。それよりも僕だけ仲間外れにするなんてひどいじゃない」
ヒースが唇を尖らせる。顔は笑っていた。どうやら本気で言っているわけではないらしい。
アベルが首を横に振る。
「たまたまだよ。おまえこそなんでここにいるんだ? 行きつけか?」
「違うよ。そこの世間知らずのお嬢様がひとりでほっつき歩いているのが見えたから後ろからついてきたんだ。薄暗くなってきたから心配でね」
「あ、ヒース、見守ってくれてたんだ」
おそらく自分が危ない目に遭いそうだったら助けに出てくれる算段だったのだろう。さりげない優しさだ。
セシリーナはヒースに笑みかける。
「ありがとう、ヒース」
「べ、別に」
「なに照れてんだよ」
「照れてない!」
アベルがにやにやと突っ込んで、ヒースが憤慨している。なんだかんだで自分たちは仲良くなってきたと思う。
ケルヴィンが立ち上がって隣の椅子を引く。
「ヒース様、よろしければご一緒にお食事はいかがですか?」
「ああ、うん、ぜひ」
「で、さっきおまえが言っていた聖水の小瓶ってどういうことだ?」
アベルが問いかける。ヒースは肩をすくめた。
「さっき盗み聞きしたんだけれど、君たち、ウェルカムサービスとやらについて話していたみたいじゃない?」
「盗み聞き……」
「セシィ、いちいち突っ込むな。それでウェルカムサービスに聖水の小瓶はどうかって話か?」
「そう。この王都には女神教の巡礼者が多く訪れる。女神教のお膝元だからね」
「うんうん」
セシリーナもアベルもケルヴィンもふんふんと頷く。
ヒースが人差し指を立てた。
「だからさ、女神教に関する物は誰にでも例外なく喜ばれるわけ」
「なるほど。それが聖水っていうわけだな」
アベルが言うと、ヒースが祭服の内ポケットから小さな小瓶を取り出した。精巧な装飾の施された透明な瓶。中で薄青の液体が揺れている。ケルヴィンが小瓶に目をやる。
「それがヒース様の言う聖水の小瓶ですか。聖水の精製は神官様に、小瓶の製作は王都の雑貨屋に依頼しましょうか」
「良いですね! それなら雑貨屋さんにも仕事を回せるから喜んでもらえそう」
まさに一石二鳥だ。経済を回すという理念に合っている。
セシリーナはヒースがテーブルの上に置いた聖水の小瓶を覗き込む。
「それにしても綺麗な聖水ですね」
「僕が手ずから精製したものだからね。よかったらあげるよ」
「え、いいんですか!?」
まさか次期教皇候補お手製の聖水をいただけるとは思わなかった。びっくりするセシリーナに、ヒースは後ろ頭を掻く。
「いや、大したものじゃないけれど。それでも効果はあるはずだよ。ウェルカムサービスとして検討するなら試作品として使ってみてもいいんじゃない」
「うんうん。本当にありがとう!」
「だからそんな喜んでもらえるほどの物じゃないってば」
ヒースが気恥ずかしそうにしている。意外と照れ屋さんなのかもしれない。それにしてもさりげない優しさだ。
ケルヴィンが皆の顔を見まわす。
「さっそくですが次のダンジョン攻略ツアーで配ってみてはいかがでしょう。魔獣が活発化していることもあります。聖水は参加者の身を守ってくれるのではないかと」
「そうだな。魔獣は聖水の持つ聖なる力を嫌う。参加者から魔獣を遠ざけてくれるはずだ」
「それを加味すると聖水の小瓶をウェルカムサービスにするのは理に適ってますよね」
セシリーナは感心する。ヒースの名案に感謝するばかりだ。これでウェルカムサービスの内容は決まった。
セシリーナたちは次々と運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。ダンジョン攻略ツアーの開催が迫っていた。


