な、な、な……!?
「な、なんでそれを知って――……?」
あまりにもとっさのことで、セシリーナはヒースの言葉を認めることしかできなかった。彼の言う『転生者』が自分の思う転生者と同じ意味かもわからないのに。けれども心配は杞憂だったようで、ヒースはこちらを試すように笑んだ。
「あんたは女神のお力によって、別世界からこの世界の人間に生まれ変わった転生者なんだろう?」
「そ、それは……」
「その事実を知っているのは自分だけかと思ったら大間違いだよ。そうはいっても、僕以外に知っている人は限られてくるだろうけれど」
ちなみにあの聖女の女性も転生者なんだろう、とヒースは何事もないように付け加える。
彼には自分たちの事情は全部筒抜けなのだろうか。けれども、どうして――?
どう言葉を返していいものかわからずに閉口していると、ヒースが苦笑した。
「そんなに困った顔をしないでよ。どうして僕があんたの転生を知っているのかというと、身も蓋もない言い方をすれば僕の生まれであるクラーク一族はこの世界の事象に明るいからなんだ。この世界の運営と管理を任せられている、だから一般の人びとが知らされていないことを知っている、と言えばいいのかな」
この世界の、運営と管理を任せられている……? それはつまり、クラーク一族は代々教皇の役職を務めながら、この世界を牛耳っているということなんだろうか。
(つまりは裏の支配者……!?)
なにかとんでもないことを聞いてしまった気がする。クラーク一族が持っている実権は、自分や世間一般の人が思っている以上に強いのかもしれない。ヒースが空気を和らげるように蜂蜜パンを齧る。
「僕たちの一族は、表向きは代々教皇を選出する神官家系だ。けれども裏向きは女神の命に従って働く直属の部下なんだよ。だから女神と対話することが許されているんだ」
「女神様に頼まれた仕事を秘密裏に遂行する役割ってことですか……?」
「そういうこと」
つまりヒースは、女神と対話できるから自分やフィオナが転生者であること知っていたと言いたいのだろう。女神の存在は疑うべくもないし彼が嘘を言っているとも思えない。彼は自分に踏み込んだ話をしてくれようとしているのだ。この機会を逃す手はない。セシリーナは質問を続ける。
「それじゃあ、ヒースが私に協力してくれるのはなぜなんですか? それも女神様からの指示?」
「違うよ。僕があんたと行動を共にしているのは僕の独断」
「じゃあ、どうして……」
ヒースは青々と澄み渡る空を見上げる。
「僕はこの世界の仕組みを変えたいんだ。女神は僕たち一族に何かを隠しながら仕事をさせている。父……教皇ならばそれが何か知っているのかもしれないけれど」
「女神様の隠し事……? つまりヒースはそれを暴きたいってことなんですね」
「そう。今代は転生者なんて面白いイレギュラーが現れたからね。今まで繰り返されてきた歴史とは違う何かが起きる。そんな予感がするんだ」
彼は彼の予感に従って転生者の自分といてくれているのだろう。自分が彼に何をしてあげられるのかはわからない。それでも彼の役に立てたらいいなと思う。
「わかった。お互いに今話したことは皆には秘密ってことでいいですか?」
「そうだと助かる。世間一般的には女神の存在は明らかにされていないから」
「つまり、女神様はあくまで信仰の対象であって実在することは明らかにされていないっていうこと?」
「そういうこと」
ヒースが片眼をつむってみせた。女神とコンタクトが取れるのはあくまでクラーク一族だけに限られているのだろう。さてと、とヒースがおもむろに立ち上がる。
「休憩はこのくらいにしておこうか。僕の活躍を待っている人たちがまだまだ大勢いるからね」
「……それ自分で言っちゃうんだ」
一見ナルシスト発言だけれど、彼の場合実力が追いついているから嫌味がない。むしろ茶目っ気があるようにすら感じる。
セシリーナも立ち上がってヒースに片手を差し出した。
「ともかくヒース、これからも何卒よろしくお願いします! あなたは我が社の社員でもあるんだから」
「はいはい。せいぜい身を粉にして働かせていただきます」
彼と固く握手を交わす。彼が時折見せてくれるやんちゃな笑顔を浮かべて、セシリーナはどうにも落ち着かない気持ちになるのだった。
「な、なんでそれを知って――……?」
あまりにもとっさのことで、セシリーナはヒースの言葉を認めることしかできなかった。彼の言う『転生者』が自分の思う転生者と同じ意味かもわからないのに。けれども心配は杞憂だったようで、ヒースはこちらを試すように笑んだ。
「あんたは女神のお力によって、別世界からこの世界の人間に生まれ変わった転生者なんだろう?」
「そ、それは……」
「その事実を知っているのは自分だけかと思ったら大間違いだよ。そうはいっても、僕以外に知っている人は限られてくるだろうけれど」
ちなみにあの聖女の女性も転生者なんだろう、とヒースは何事もないように付け加える。
彼には自分たちの事情は全部筒抜けなのだろうか。けれども、どうして――?
どう言葉を返していいものかわからずに閉口していると、ヒースが苦笑した。
「そんなに困った顔をしないでよ。どうして僕があんたの転生を知っているのかというと、身も蓋もない言い方をすれば僕の生まれであるクラーク一族はこの世界の事象に明るいからなんだ。この世界の運営と管理を任せられている、だから一般の人びとが知らされていないことを知っている、と言えばいいのかな」
この世界の、運営と管理を任せられている……? それはつまり、クラーク一族は代々教皇の役職を務めながら、この世界を牛耳っているということなんだろうか。
(つまりは裏の支配者……!?)
なにかとんでもないことを聞いてしまった気がする。クラーク一族が持っている実権は、自分や世間一般の人が思っている以上に強いのかもしれない。ヒースが空気を和らげるように蜂蜜パンを齧る。
「僕たちの一族は、表向きは代々教皇を選出する神官家系だ。けれども裏向きは女神の命に従って働く直属の部下なんだよ。だから女神と対話することが許されているんだ」
「女神様に頼まれた仕事を秘密裏に遂行する役割ってことですか……?」
「そういうこと」
つまりヒースは、女神と対話できるから自分やフィオナが転生者であること知っていたと言いたいのだろう。女神の存在は疑うべくもないし彼が嘘を言っているとも思えない。彼は自分に踏み込んだ話をしてくれようとしているのだ。この機会を逃す手はない。セシリーナは質問を続ける。
「それじゃあ、ヒースが私に協力してくれるのはなぜなんですか? それも女神様からの指示?」
「違うよ。僕があんたと行動を共にしているのは僕の独断」
「じゃあ、どうして……」
ヒースは青々と澄み渡る空を見上げる。
「僕はこの世界の仕組みを変えたいんだ。女神は僕たち一族に何かを隠しながら仕事をさせている。父……教皇ならばそれが何か知っているのかもしれないけれど」
「女神様の隠し事……? つまりヒースはそれを暴きたいってことなんですね」
「そう。今代は転生者なんて面白いイレギュラーが現れたからね。今まで繰り返されてきた歴史とは違う何かが起きる。そんな予感がするんだ」
彼は彼の予感に従って転生者の自分といてくれているのだろう。自分が彼に何をしてあげられるのかはわからない。それでも彼の役に立てたらいいなと思う。
「わかった。お互いに今話したことは皆には秘密ってことでいいですか?」
「そうだと助かる。世間一般的には女神の存在は明らかにされていないから」
「つまり、女神様はあくまで信仰の対象であって実在することは明らかにされていないっていうこと?」
「そういうこと」
ヒースが片眼をつむってみせた。女神とコンタクトが取れるのはあくまでクラーク一族だけに限られているのだろう。さてと、とヒースがおもむろに立ち上がる。
「休憩はこのくらいにしておこうか。僕の活躍を待っている人たちがまだまだ大勢いるからね」
「……それ自分で言っちゃうんだ」
一見ナルシスト発言だけれど、彼の場合実力が追いついているから嫌味がない。むしろ茶目っ気があるようにすら感じる。
セシリーナも立ち上がってヒースに片手を差し出した。
「ともかくヒース、これからも何卒よろしくお願いします! あなたは我が社の社員でもあるんだから」
「はいはい。せいぜい身を粉にして働かせていただきます」
彼と固く握手を交わす。彼が時折見せてくれるやんちゃな笑顔を浮かべて、セシリーナはどうにも落ち着かない気持ちになるのだった。


