聖騎士様と始める異世界旅行事業 ~旅行会社の会社員でしたが異世界に転生したので起業します~

「――此度の活躍、見事であった」

 防衛戦を無事に終えたセシリーナたち。疲労感は取れていなかったが、国王陛下に報告をするため謁見の間に集められていた。陛下が満足そうに微笑んでいる。
 まさかこんなにも早く竜王の魔の手が王都にかかるとは思わなかった。おそらく今後もこのような襲撃がたびたび起こるかもしれない。早急に対策しなければならないだろう。
 陛下がぼそりと呟く。

「……このような事態を目の前にすると、やはり聖女の存在が必要不可欠であると思えてくるな」

 聖女は魔獣を消滅させる浄化魔法が使える。今回のように魔獣の大群が押し寄せた際、聖女の浄化魔法があれば百人力なのだ。魔獣を一網打尽にできるから。そしてその聖女に選ばれたのがフィオナなのである。彼女は自分と同じ転生者だ。そしてあろうことか竜王に囚われている。

(彼女を竜王のもとから助け出さないといけない……)

 どうにかして彼女の居場所を突き止めることはできないだろうか。
 セシリーナは顔を上げる。

「陛下、発言をお許しください。聖女フィオナはわたくしの友人なのです。なんとしても竜王の手から彼女を助け出したい。ですからどうか、わたくしにこの世界を自由に渡航するご許可をお与えいただけないでしょうか?」

 通常、国から国や大きな町から町に行き来するためには、滞在理由を証明するために都度許可証が必要なのだ。けれども、毎回許可証を申請していたのではわずらわしすぎて竜王を追いながら聖女を助けることなど不可能だろう。できるだけフットワークを軽くしたい。そのためには国王陛下直々の渡航許可証ならぬパスポートが必要なのだ。
 一介の伯爵令嬢に国王陛下自らが許可証を発行するなど前代未聞のことだろう。けれども陛下は二つ返事で頷いた。

「うむ、問題ない。むしろシュミット伯爵令嬢の志のある申し出に感謝したいくらいだ。では、ワールドツーリスト社の従業員に無制限の渡航許可証を発行しよう。大いに活用してくれたまえ」
「あ、ありがとうございます……!」

 これで自分とアベル、ケルヴィンとヒースはどこでもかしこでも移動できることになる。わずらわしい手続きを踏まずに世界中を駆け回ることができる。
 事の成り行きを見守っていたシュミット伯爵が深々と頭を下げた。

「陛下、寛大なご采配に感謝いたします」
「うむ。貴殿らの活躍に期待しておるぞ」

 決意を新たにして、セシリーナは国王陛下にひざまずいた。



 その後――
 セシリーナたちは城下町の復旧に力を貸すことになった。王都の門前で魔獣の侵攻を防いだとはいえ、戦いの影響で町はずれは瓦礫の山になっている。無残に崩れている城壁を見上げてセシリーナは途方に暮れた。

「なんて酷い……。町が元通りになるにはどれくらいかかるだろう」
「嘆いている暇はないぜ。なあ、この瓦礫はどこへ片づけたらいいんだ?」

 アベルがセシリーナの肩を叩いてから、大きな煉瓦を軽々と肩に担ぎ上げる。声をかけられた若い兵士がぎょっとした。

「い、いえ、聖騎士様にそこまでしていただくわけには……!」

 それを聞くにつけ、箒で瓦礫を掃いていたケルヴィンが手を止める。

「いえいえ、アベルは馬鹿力が売りですからお気になさらないでください」
「おまえが言うな」

 アベルがげんなりしている。セシリーナは思わず吹き出した。二人とも本当に仲が良い。
 ちなみにヒースはここにはいない。王都の教会で運び込まれてきた負傷者の救護に当たっているらしい。治癒魔法の精度は神官の腕前に比例する。高レベルのヒースは引っ張りだこだろう。

(彼、聖騎士と竜王の関係についてなにか知ってそうだったよね……)

 次期教皇候補の彼。彼ほどの人がなぜ自分の会社に肩入れしてくれたのだろう。彼の本当の目的はいったいなんなのだろうか。なんとかして聞き出せるといいのだけれど。

(あとでヒースになにか差し入れを持っていってみようかな。きっと負傷者の救護で疲れているだろうし、彼と真剣に話すきっかけになるかもしれない)

 休憩時間を見計らって、セシリーナはヒースへの差し入れを買いにでかけた。