「父さん、この機会をくれてありがとう。」
そう言う、なぎくんの手の震えが私にも伝わる。
「紹介します。俺の好きな、藍初歌さんです。」
なぎくんの言葉に続いて、震える声で言う。
「こん、にちは。なぎく……渚くんからご紹介にあずかりました。……藍初歌です。よろしくお願いします……!」
精一杯、頭を下げた。
シーン
私たちの間に沈黙が起きた。
なんかまずいこと言ったっけ……?
冷や汗がじわじわと滲んでくる。
「もう、終わりにしていいか?」
そんな声が聞こえたと思ったら、なぎくんのお父様が立ち上がっていた。
「え……?」
「じゃあ。」
待ってください。
行かないで。
そんな気持ちが前に出ていたのか、気が付けばなぎくんのお父様を通せんぼしていた。

