数秒前は。 「なぎくんのばかーーーー!!!!!」 精一杯の悪口。 「えっ、神田っ?」 奈津くんはびっくりして私を離す。 「奈津くんごめんっ!」 夜の砂浜を駆ける。 「……なぎくん、待っ、て………!」 なぎくん、聞こえてるんでしょ。 分かってるんでしょ。 だって肩が震えてたもん。 ――“初歌のことならなんでも分かるの。” 私だってなぎくんのことなら全部わかってるつもりだよ。 「なぎくん!」 なぎくんの袖を掴む。