Sad Tone - Until You Fall Asleep-悲しげな音色-君が眠りに落ちるまで

第3楽章へ入ると、追いつかなくくらい指を速く速く動かす。

左手はほぼ変わらない場所で、右手が上へ行ったり下へ行ったりと交錯するところが難点だ。

そして、あっけなく余韻を残したまま終わる。


「お姉ちゃん上手〜!大好き〜!」


そう言ってにこにこと天使のように微笑む、梨奈。


「ありがと。じゃあそろそろ、私レッスン行ってくるね」


「いってらっしゃ〜い!」


「ちゃんと鍵閉めて、お利口に待っててね〜」


「はぁ〜い!」


そうして、お母さんに連絡を入れて、ピアノのレッスンへ向かう。

今日は、何をするんだったっけ。

どれにしようかなとかどうでもいいことを考えていると、レッスン場所のタワマンの前へ着いた。


「美琴さん、こんにちは。プロピアニストとも言われる美琴さんに、世界コンテストの応募が来てますよ!」


「あ、御影先生こんにちは、、世界、、コンテスト、、、!?えっ、そうなんですか、、!?」


「美琴さん、、!せっかくだし、やってみませんか?」


「えっ、、ぜひっ、、!」


「よかった。美琴さんなら、きっとそう言ってくれると思ってました。このコンテスト、選曲は『幻想即興曲』がいいと思います。そして、このコンテストは4手連弾での演奏となります。」


「4手連弾、、ということは、相方がいますよね?」


「そうですね。で、相方は美琴さんに次ぐ有名さを持つ、九条蓮くんと演奏することをおすすめします。2人とも、有望な日本を代表するピアニストですから」


「わかりました、、じゃあ、その九条くんは、、?」


「、、九条蓮だ。お前のことは有名だから聞いてる、白浜美琴だろ。、、よろしく」


「あ、、よろしくお願いします」


「じゃあ、2人とも頑張って下さいね〜では、ぜひ合わせてみて下さい」


先生に言われて早速やってみたが、はじめたばかりなので初手からバラバラだった。


「九条くん、ここはアレグロ・アジタードを意識して速く弾くのと、左手のタイをもっと意識するといいと思います。もう一回やってみますか」


淡々と、アドバイスをする。


「、、正確だな、お前」


「そこまででも、、ありがとうございます。」


そして、また合わせてみる。


さっきよりは息が合い、お互いアドバイスを交わして繰り返し練習をした。


「お疲れ様でした、、ありがとうございました」


「ああ、、待てよ、白浜」


手首を引かれ、少しよろけそうになる。


「はい、?」


「、、またよろしくな」


「はい、こちらこそ」


茶色い皮のスクールバッグを持って、レッスンのホールを後にした。