『君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな』




「め~ぐ~り~、さんっ」
「うひゃっ」
 帰ろうとしていると、同じクラスの花山(はなやま)さんに声を掛けられた。
 ……あれ。
 花山(はなやま)さん、って、かるた部なんじゃ……。
「ちょーっと良いかな?」
「え?……あ、うん。良い、かな」
 なんか、怪しいんだけど。
「……ねえ、なんの用、なのかな?」
「……さあね?」
 これは、まさか、かるた部への、勧誘⁉
 え、いや、それは困るよ。
 ……まさか、まさかね。
 うん。
 大丈夫。
「……どこに向かってるの?」
「……さあね?」
 さっきと同じ答え。
 ……でもさ、やっぱりかるた部の部室のほうに向かってない?
 ……。
「……もしかして、もうすぐ着く?」
「………………さあね……」
 なんか今までよりも間があったぞ。
 すっごく怪しい。
「……」
「……さあ、着いたよー!」
「あ……」
 着いたのは、かるた部の部室の前だった。
 やっぱり……。
「ぶちょー!連れてきましたよー!」
「オト。まさかホントに……」
 部室からは、違うクラスの霧島(きりしま)さんの声がした。
音葉(おとは)!よくやった!」
 霧島(きりしま)さんと同じクラスの奥田(おくだ)さんの声もした。
「……おと、ほんとに連れてきたんだね……」
 そして、部長・住野(すみの)先輩の声もした。
 住野(すみの)先輩の声は、なんだか悲しそうだった。
 私に負けて、優勝できなかったからかな。
「単刀直入に言うね、(めぐり)さん。……かるた部に入部してください!」
 ……でしょうね。
「私たち桃川高校競技かるた部は、全国大会に進むことが多いんだけど。昔は1位で通ってたのが多かったの。でも、最近は2位で通ることが多くてね。1位が、ずっと違う学校で……。……星稜学院(せいりょうがくいん)高校(こうこう)っていうとこなんだけど」
 ……へー。
「星稜は、団体戦メンバーが、全員A級なの」
 そんな学校あるんだね。
「でも、桃川は、A級3人で、いつも負けてて……。音葉(おとは)が、もうすぐA級昇格できそうなの。だから、あと1人A級が入ってくれれば、星稜に並べるはず、で……」
 それで、私が……。
 でも、なんでバレた?
(めぐり)さん、って聞いたことある気がしてね。考えてみたら、私が、ここで優勝すればA級昇格、っていう大会で初戦にあたった子がそんな名前だったな、って。私、初戦で負けて、悔しかったから、すごく覚えてて……」
 ……そうなんだ~。
 覚えてないよ、さすがに。
 初戦であたった子でしょ?
 わざわざ覚えてないって。
「それに、すっごく有名人だったんだよ、(めぐり)さんって。かるた、すごく強かったから」
 有名人って……。
(めぐり)さんって、村佐(むらさ)さんに勝ったことあるんでしょ!」
 ……。
 村佐(むらさ) 夜乃(よの)さん。
 現かるたクイーン。
 私と同じかるた会に所属している。
 かるたをやらなくなってからも、かるた会には入ったままだし、たまに顔を出している。
 ……なんで知ってるの。
「かるたやってる人なら、知らない人はいない、村佐(むらさ)さんだよ!その人が、インタビューで、『将来を期待している選手は?』って聞かれたときに、村佐(むらさ)さんが言ったのが、(めぐり)さん!『何回か戦ったことはあるけど、結構強いし、負けることもある』って答えてた!知らない?」
 ……あー。
 そんなこともあった、気がする。
「そのこと、私、(めぐり)さんと戦った後に知ってね。あの子って、そんなに強かったんだな~って思った記憶があるの」
 でも、私村佐(むらさ)さんに勝てた回数、結構少ないよ。
 ……でも、確かに倉持(くらもち)かるた会では、村佐(むらさ)さんに勝てた人、私以外に1人もいなかったな。
(めぐり)さんが入ってくれれば、うちのかるた部は、もっとレベルアップできると思う!だから、お願い!かるた部に入ってください」
「「「「「「「「「お願いします」」」」」」」」」
 全員から頭を下げられる。
 でも……。
「ごめんなさい。私は……」
「そっか……。……もし!もし入る気になれば!いつでも来てね!」
 1年生への部活紹介の時に配られたかるた部紹介の紙を渡される。
 仕方ない。
 これくらいは受け取っておこう。
「はい……」