「その猫かぶりマウント取りとは、俺のことか?」

開いたドアから、低い声が聞こえた。

そこには、いつ見ても綺麗なシオンが、顔をしかめてスタンションポールに肘をついていた。

青ざめて悲鳴を上げるその姿を、シオンが眼だけを動かして上から見下ろす。
その長いまつ毛は、重力を逆らっているかのようにのびていた。

女子よりも美人と学校中で謳われる華奢な見た目で、つり目の冷徹な眼差しと、低い声で圧倒的な存在感を放つその男の子は、ゆーひに十二分に威嚇をしてから、私を見つめ、ふんわりと花が咲いたように、いつものにっこりとした表情で笑いかけた。


「おはよ。まいちゃん」



右側にゆーひ、左側にシオンという学校内で最もモテている(まい調べ)二人に挟まれて、三人仲良く座っていると、電車内に誰もいなくて良かったと思った。

もしもこの姿を学校の女子に見られたら、今頃どうなっていたことだろうか。

そんなことを考えていると、急にシオンが私の首元にするりと腕を絡ませて、引き寄せられる。

シオンの私との距離感は、ゆーひも同じだけど、少々近いような気がする。


「小二の三学期くらいから音信不通だったんでしょう?それはもう他人でしょう。た・に・ん!」

ピシャーンとゆーひに雷が落ちたのが分かる。

「本当はいつも日本に帰りたかったって言っているだろうが!!」
前半、聞こえていなかったが、いつもの言い争いをしているらしい。



きっと心の中では仲良しなんだよね……?

そんな鈍い考察を立てていた時、二人の間では、どっちがまいのかわいさを知り尽くしているかという話で口論になっていた。

____電車内ではお静かに。